研究課題
本研究の目標は、神経回路が形態的、機能的に成熟するプロセスにおいて、樹状突起の再編が担う役割、およびその再編のメカニズムを理解することにある。そのために、ショウジョウバエの感覚ニューロンをモデル系に選び、樹状突起形態を精緻に生体内観察できるイメージングシステムを確立した。さらに、本研究開始時において、この独自の実験系を活用することにより、感覚ニューロン樹状突起の形態が、ハエ成虫が羽化してから24時間以内に、放射状から格子状へと劇的に再編されることを発見していた。この再編には、基底膜や細胞外プロテアーゼを含む細胞外環境の変化が重要であったが、具体的な作用機序は不明だった。平成24年度ではまず、樹状突起の再編過程における、細胞外プロテアーゼMmp2分子の挙動を可視化するために、GFP標識Mmp2ノックイン系統を作製した。この系統が有するGFP標識Mmp2分子は内在性のMmp2分子の挙動を再現していた。これはGFPシグナルの分布がMmp2発現細胞と一致するかを検証することにより示された。次に、樹状突起再編とプロテアーゼや基底膜の挙動を同時に可視化するために、樹状突起のイメージングシステムにGFP標識Mmp2分子や蛍光標識型の基底膜分子を導入した。詳細な観察の結果、Mmp2分布と樹状突起との間には明確な関連を見出せなかったが、基底膜と樹状突起との間に興味深い関係性を発見した。すなわち、基底膜が局所分解されるにつれて、樹状突起が基底膜の残存部分に移動する傾向が見られた。この結果は、基底膜が樹状突起の再編を誘引的に導く可能性を示唆している。研究期間全体を通じて、樹状突起の再編過程における、プロテアーゼ、基底膜、樹状突起の3者の挙動を生体内観察できる実験システムを構築することができた。これらの成果は、基底膜に依存した樹状突起再編の分子メカニズム解明につながると考えられる。
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Biochemistry Research International
巻: Volume 2012 ページ: pp. 1-8
10.1155/2012/789083
http://www.obi.or.jp/emoto-lab/