研究課題/領域番号 |
23770265
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
平手 良和 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (70342839)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | マウス / 細胞分化 / 着床前胚 / Hippo経路 / 発生生物学 |
研究概要 |
マウス着床前胚の細胞分化は、細胞が胚の内側にあるか外側にあるかという位置の違いによって決まる。この位置依存的な細胞分化を制御しているのはHippo経路である。本研究のねらいは、新規Hippo経路制御分子Angiomotin (Amot)による着床前胚のHippo経路制御機構(細胞接着→Amot→Hippo経路)を明らかにし、着床前胚の位置依存的細胞分化の全容を解明することにある。H23年度は、1)AmotによるHippo経路活性化、2)外側細胞の細胞極性によるAmot依存的Hippo経路抑制、3)Hippo経路制御にかかわるAmot機能ドメインの特定について解析を行った。その結果、1)マウス着床前胚においてAmotおよびAmotl2が発現していること、そして、マウス着床前胚のHippo経路活性化はこの二つの遺伝子に完全に依存していること、2)細胞極性によるHippo経路抑制はAmotを細胞接着面から排除することで細胞接着情報がHippo経路へ伝わらないために起こること、3)AmotはHippo経路構成分子との直接的結合に関わる3つのPYモチーフを持つが、これはHippo経路活性化に必要ではなく、N末端側の機能未知のドメインと中央にあるコイルドコイルドメインが必要であることを明らかにした。H24年度は、これらのドメインと相互作用する分子群を明らかにし、細胞接着→Amot→Hippo経路の全容解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度には、1)AmotによるHippo経路活性化、2)AmotによるHippo経路活性化は細胞極性による影響、3)Hippo経路活性制御機構に関与するAmotの機能ドメインの特定を予定していた。1については、AmotとともにAmotファミリーの遺伝子であるAmotl2もHippo経路活性化に関与していること明らかにし、当初の計画よりさらに一層踏み込んだ形でAmotファミリーによるHippo活性化を示すことができた。2については、予定していた通り、頂端側と基底面側の制御因子群について機能抑制実験を行い、細胞極性によるAmotファミリー分子の分布制御とHippo経路活性化との間の興味深い関連を示すことができた。3については、研究開始当初に立てていた作業仮説にあてはまらない結果が得られてきており、予定していなかった多くの実験が必要となった。その結果、当初考えていたより多くの時間が必要となっているが、解析は順調に進んでおり、Amotファミリーによる新規のHippo経路活性化機構の解明につながる成果が得られてきている。以上の事由から、本研究はおおむね順調に進展していると判断する
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今後の研究の推進方策 |
H23年度は所属する研究室の熊本大学への移転があり、それに伴い、実験に使用するマウスの繁殖、および、研究室の立ち上げに時間を要した。H23年度に未使用額があるのはそのためである。立ち上げ後は順調に研究が進展しており、今後も当初の実施計画通り研究を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度はAmotによるHippo活性制御機構を構成する分子群を明らかにすることが研究の中心となるが、H23年度のマウス胚を用いた解析から、AmotによるHippo経路活性化は当初の作業仮説にあてはまらない全く新規の機構によるものであることが示唆されており、Amotとの相互作用を解析すべき候補分子の数も増えた。したがって、マウス胚を用いたsiRNAなどによるノックダウン実験や、培養細胞を用いた免疫沈降実験を計画よりも数多く行う必要があり、必要な抗体や試薬類及び実験動物の購入は当初の予定を上回ることが予想される。H24年度はH23年度の未使用分を上乗せする形で研究費を使用することになるが、このような研究状況から考えて、研究計画に大きな変更を加えなくても全研究費を使い切ることができると考えている。
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