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2012 年度 実施状況報告書

咽頭弓分節化に伴い周期的に発現変動する遺伝子の分子計時機構解明

研究課題

研究課題/領域番号 23770268
研究機関北里大学

研究代表者

大久保 直  北里大学, 医学部, 講師 (10450719)

キーワード咽頭弓分節 / 転写活性化 / ネガティブフィードバック機構 / Tbx1 / Ripply3
研究概要

脊椎動物の発生過程では5~7対の咽頭弓が、発生の進行とともに頭側から尾側に向かって順次作られて行く。各咽頭弓は内胚葉と外胚葉が接した咽頭嚢および咽頭裂と呼ばれる構造によって区切られており、このようなスリットの周期的な形成が咽頭弓の構造的分節性のもととなっている。マウスのRipply3遺伝子は、分節化予定領域の咽頭内胚葉と咽頭外胚葉でまず強く発現し、その後形成された咽頭嚢とそれに隣接する外胚葉に発現する。より尾側の咽頭内胚葉と外胚葉での発現は強く、各咽頭弓の形成のタイミングに呼応するかのように発現のON/OFFを繰り返していることがin situ hybridizationによる解析から示唆された。そこで本研究は、さらに咽頭弓分節にともなうRipply3の時間的な発現変化を生み出す分子メカニズムを解明することが目的である。
昨年度までに作製したRipply3プロモーターGFPトランスジェニックマウスは、咽頭弓の分節化に伴って内胚葉と外胚葉でGFPを特異的に発現し、そして周期的にGFPの発現がON/OFFしながら後方へシフトしていた。この結果から、少なくとも上流6kbの配列内には発現の周期的ON/OFFを制御する因子が作用する配列があると予想された。平成24年度は、この上流6kbをルシフェラーゼレポーターにつなぎ、培養細胞を用いて、Ripply3プロモーターに対する活性化因子として転写因子Tbx1の影響を調べた。その結果、Tbx1は量依存的にRipply3のプロモーター活性を上昇させることを見いだした。また、Ripply3をTbx1と共発現させると量依存的にRipply3自身のプロモーター活性を抑制した。これらの結果は、Tbx1によるRipply3の活性化とRipply3自身のネガティブフィードバックによる発現調節機構が存在する可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年度までの解析から、マウスRipply3遺伝子のプロモーター配列(6kb内)にRipply3の周期的な発現のON/OFFを制御する領域があることが示唆された。このプロモーター領域をルシフェラーゼにつなぎ、培養細胞系を用いてレポーターアッセイを行ったところ、Ripply3の発現を直接的に活性化する転写因子の候補としてTbx1を見出した。またRipply3による自身のプロモーターに対するネガティブフィードバックによる発現抑制があることが示唆された。このことは、Ripply3遺伝子の発現活性化と抑制に関わる分子機構の解明につながると期待される。このレポーターシステムは、今後、Tbx1の結合配列の絞り込みのみならず、新たな転写制御因子複合体の解析にも有用である。また、RIpply3のプロモーター活性はGFPトランスジェニックマウスの蛍光として組織、個体レベルでも解析可能であり、in vivoのデータと合わせて実験データを検証していくシステムがすでにできあがっている。以上から、研究の進行状況はおおむね順調と考えられる。

今後の研究の推進方策

最終年度は、まずRipply3のプロモーター活性への各因子の影響をin vivoで解析するため、Tbx1ノックアウトマウスやRipply3ノックアウトマウスとRipply3プロモーターGFP複合トランスジェニックマウスを作製し、各遺伝子欠損の影響をGFPの蛍光強度を指標に調べる予定である。また、既知のTbox結合配列の情報をもとに、Ripply3プロモーター欠損体を作製し、培養細胞を用いたレポーターアッセイによりTbx1の結合領域を解析する。さらに、咽頭嚢で発現するTbx1以外の転写因子として、Pax9やSox2のRipply3プロモーター活性への影響を検討する予定である。一方、Ripply3 GFPマウス胚の全胚培養系の確立がまだ十分とはいえず、より長時間の安定した培養が可能な系への改良が必要だと考えられる。この系が確立すれば、各種シグナル分子や阻害因子、特にレチノイン酸シグナル経路の阻害によるGFP発現への影響を調べる予定である。これらの解析結果を統合し、咽頭弓で周期的に発現変化するRIpply3遺伝子の制御機構を解明していく。

次年度の研究費の使用計画

複合遺伝子改変マウスの作出と飼育維持、系統維持にかかる経費、遺伝子型決定に用いるPCR用試薬、組織・形態学的解析にかかる費用、細胞培養のための培地や血清にかかる費用、遺伝子導入およびルシフェラーゼアッセイ等の分子生物学的解析のための試薬購入、シグナル分子の阻害剤の購入、論文執筆や出版にかかる費用に用いる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] Role of the pharyngeal arch as an infrastructure of cranial nerve projection for the development of taste buds in the posterior tongue2012

    • 著者名/発表者名
      Okubo T, Takada S.
    • 学会等名
      第35回 日本分子生物学会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121212-20121212
  • [学会発表] Role of the pharyngeal arch as an infrastructure of cranial nerve projection2012

    • 著者名/発表者名
      Okubo T, Takada S.
    • 学会等名
      International Symposium Neuro-Vascular Wiring
    • 発表場所
      奈良
    • 年月日
      20121112-20121113
  • [学会発表] Role of the pharyngeal arch as an infrastructure of cranial nerve projection for the development of taste buds in the posterior tongue2012

    • 著者名/発表者名
      Okubo T, Takada S.
    • 学会等名
      第45回 日本発生生物学会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      20120530-20120530

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公開日: 2014-07-24  

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