研究課題/領域番号 |
23770269
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
北野 誉 茨城大学, 工学部, 准教授 (90400564)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 血液型遺伝子 / 進化 / ゲノム / 系統樹 |
研究概要 |
脊椎動物のRh式血液型遺伝子族には、本来の血液型遺伝子であるRh以外に、RhAG(Rh50)、RhBG、RhCGといった遺伝子が存在する。本研究は、ヌタウナギや軟骨魚類といった脊椎動物の初期に分岐した生物の相同遺伝子を決定することによって、Rh式血液型遺伝子族の重複と分岐のタイミングを明らかにすることを目的としている。 駿河湾で採集されたクロヌタウナギ(Paramyxine atami)の鰓、心臓、肝臓などの各組織からtotal RNAを抽出し、逆転写酵素を用いてcDNAを作製した。次に、脊椎動物におけるRh、RhAG、RhBG、RhCGそれぞれの遺伝子の多重整列からDegenerateプライマーをそれぞれ設計し、PCRを行った。その結果、他の脊椎動物のRh式血液型遺伝子族と相同性のある遺伝子の部分配列を得ることができた。得られた部分配列に新たなspecificプライマーを設計し、5’RACEと3’RACE法を用いて、cDNAの5’側と3’側の塩基配列を決定した。次に、cDNAの5’側と3’側の非コード領域に遺伝子特異的プライマーを設計し、PCRを行い、クロヌタウナギのRh式血液型遺伝子族に属する遺伝子のcDNA約1.7 kbの塩基配列を決定した。得られた塩基配列では、GC%は46.6であり、同じ円口類に属するヤツメウナギのようなGC含量の顕著な偏りはみられなかった。また、他の脊椎動物のRh式血液型遺伝子族を含めて系統解析を行ったところ、今回得られたクロヌタウナギの遺伝子は、他の脊椎動物のRhBGとRhCGの共通祖先とクラスターを形成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災の影響で、研究活動全体が例年通りには進まなかった。そのため、円口類ヌタウナギからのRNA抽出及び相同遺伝子の塩基配列決定により重点を置いたので、脊椎動物の主だった種を用いたRh式血液型遺伝子族のプロモータ領域の解析が予定よりも進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
Rh式血液型遺伝子族の相同遺伝子の塩基配列決定は、クロヌタウナギに関しては引き続き進めるとともに、軟骨魚類の解析に着手する。比較的入手の容易な日本近海の軟骨魚類を採集し、total RNAを抽出して、Rh式血液型遺伝子族のcDNAの全長の塩基配列決定を開始する。また、分子系統樹に基づく解析を行うことによって、系統樹のクラスタリングの結果から、未同定の相同遺伝子の予測も行えると考えられる。分子系統樹は、近隣結合法、最尤法、ベイズ法など様々な系統樹作成法を用いて多角的に検討する。 一方、脊索動物の主だった種を用いて、Rh、RhAG、RhBG、RhCGそれぞれのプロモータ領域の多重整列を作成し、保存領域の予備的解析を行う。まずDDBJ/EMBL/GenBankやEnsemblの塩基配列データベースから、ヒト(Homo sapiens)、マウス(Mus musculus)、ニワトリ(Gallus gallus)、ツメガエル(Xenopus tropicalis)、フグ(Takifugu rubripes)、ウミヤツメ(Petromyzon marinus)、ホヤ(Ciona intestinalis)、ナメクジウオ(Branchiostoma floridae)などの利用可能な生物種から、Rh式血液型遺伝子族のプロモータ領域を収集し、多重整列を作成する。ヒトのRhの制御領域に関しては、培養細胞を用いたdeletion解析の研究が存在するので、その情報を補足的に用いて解析を進める。プロモータ領域の塩基配列解析においては、爬虫類や軟骨魚類、無顎口上綱のゲノム配列データが不足しているので、新たに塩基配列決定を行うためのゲノムDNAを準備する。
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次年度の研究費の使用計画 |
クロヌタウナギのRh式血液型遺伝子族の相同遺伝子の配列決定が順調に進んだため、当初今年度中に塩基配列決定関連消耗品に充てる予定であった分が当該研究費として生じた(全体の約4%)。これは次年度の消耗品に追加し、それ以外は当初の予定通りに進める予定である。
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