研究課題/領域番号 |
23770269
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
北野 誉 茨城大学, 工学部, 准教授 (90400564)
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キーワード | 血液型遺伝子 / 進化 / ゲノム / 系統樹 |
研究概要 |
脊椎動物のRh式血液型遺伝子族には、本来の血液型遺伝子であるRh以外に、RhAG(Rh50)、RhBG、RhCGといった遺伝子が存在する。本研究は、ヌタウナギや軟骨魚類といった脊椎動物の初期に分岐した生物の相同遺伝子を決定することによって、Rh式血液型遺伝子族の重複と分岐のタイミングを明らかにすることを目的としている。 駿河湾で採集されたクロヌタウナギ(Paramyxine atami)から抽出したtotal RNAを用いて、次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析を行った。その結果、Rh式血液型遺伝子族に属する遺伝子のcDNAの塩基配列を3種類得ることができた。 また、軟骨魚類のネコザメとアカエイからtotal RNAを抽出し、逆転写酵素を用いてcDNAを作製した。次に、脊椎動物におけるRh、RhAG、RhBG、RhCGそれぞれの遺伝子の多重整列からDegenerateプライマーをそれぞれ設計し、PCRを行った。その結果、他の脊椎動物のRh式血液型遺伝子族と相同性のある遺伝子の部分配列を得ることができた。得られた部分配列に新たなspecificプライマーを設計し、5’RACEと3’RACE法を用いて、cDNAの5’側と3’側の塩基配列を決定した。次に、cDNAの5’側と3’側の非コード領域に遺伝子特異的プライマーを設計し、PCRを行い、軟骨魚類のRh式血液型遺伝子族に属する遺伝子のcDNAの塩基配列を2種類得ることができた。他の脊椎動物のRh式血液型遺伝子族を含めて系統解析を行ったところ、今回得られた軟骨魚類の遺伝子は、他の脊椎動物のRhBGとRhCGの共通祖先とクラスターを形成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次世代シーケンサーを用いたことによって、Degenerateプライマーでは得られなかったRh式血液型遺伝子族に属する遺伝子のcDNAの塩基配列をクロヌタウナギから得ることができた。また、軟骨魚類のRhBGとRhCGの相同遺伝子の塩基配列決定も進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
次世代シーケンサーによって得られたクロヌタウナギのRh式血液型遺伝子族に属する遺伝子の解析に関しては引き続き進めるとともに、軟骨魚類の残りの遺伝子のcDNAの全長の塩基配列決定に着手する。また分子系統樹の作成も行う。分子系統樹は、近隣結合法、最尤法、ベイズ法など様々な系統樹作成法を用いて多角的に検討する。 一方、脊索動物の主だった種を用いて、Rh、RhAG、RhBG、RhCGそれぞれのプロモータ領域の多重整列を作成し、保存領域の予備的解析を行う。まずDDBJ/EMBL/GenBankやEnsemblの塩基配列データベースから、ヒト(Homo sapiens)、マウス(Mus musculus)、ニワトリ(Gallus gallus)、ツメガエル(Xenopus tropicalis)、フグ(Takifugu rubripes)、ウミヤツメ(Petromyzon marinus)、ホヤ(Ciona intestinalis)、ナメクジウオ(Branchiostoma floridae)などの利用可能な生物種から、Rh式血液型遺伝子族のプロモータ領域を収集し、多重整列を作成する。ヒトのRhの制御領域に関しては、培養細胞を用いたdeletion解析の研究が存在するので、その情報を補足的に用いて解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
クロヌタウナギおよび軟骨魚類のRh式血液型遺伝子族の相同遺伝子の配列決定が順調に進んだため、当初今年度中に実験消耗品に充てる予定であった1,470円が費目別収支状況等「次年度使用額(B-A)」として生じた。これは次年度の消耗品に追加し、それ以外は当初の予定通りに進める予定である。
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