研究概要 |
脊椎動物のRh式血液型遺伝子族には、本来の血液型遺伝子であるRh以外に、RhAG(Rh50)、RhBG、RhCGといった遺伝子が存在する。本研究は、ヌタウナギや軟骨魚類といった脊椎動物の初期に分岐した生物の相同遺伝子を決定することによって、Rh式血液型遺伝子族の重複と分岐のタイミングを明らかにすることを目的としている。 無顎類に属するクロヌタウナギ(Eptatretus atami)の肝臓と鰓から抽出したRNAを用いて、Illumina HiSeq 2000によるde novoトランスクリプトーム配列解析を行った。その結果、肝臓のサンプルから44,603,820、鰓のサンプルから47,144,366のclean readsが得られた。それぞれのclean readsを解析することによって、それぞれ104,126(平均 314 bp)と115,795(平均 378 bp)のcontigsを得ることができた。これらをまとめて相同性検索を用いた解析を行ったところ、28,520の既知のCDS配列とヒットし、これらのアノテーションを付けることができた。 得られたクロヌタウナギのcDNA配列全体のGC含有量は46.1%であり、ヤツメウナギ類と比較しても、それほど高いGC含有率ではなかった。また、アリル間での塩基置換数を比較したところ、転位置換は66.0%と、転換置換(34.0%)よりも多くみられた。 Rh式血液型遺伝子族においては、2つのRhBGと1つのRhCGの相同遺伝子を得ることができた。他の脊椎動物のRh式血液型遺伝子族を含めて系統樹を作成したところ、クロヌタウナギのRhCGは、他の脊椎動物のRhCGとクラスターを形成したが、クロヌタウナギの2つのRhBGは、他の脊椎動物のRhBGとRhCGとの共通祖先の枝に位置した。そのため、さらにサイトごとの系統解析を行ったところ、クロヌタウナギの2つを含む無顎類のRhBGでは、他の脊椎動物のRhCGに収斂するようなアミノ酸置換がいくつかみられ、これらが真の樹形を得ることの妨げになっているということが示唆された。
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