研究課題/領域番号 |
23770277
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
阿部 淳 日本女子大学, 理学部, 学術研究員 (10424764)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ヒメミカヅキモ / シャジクモ藻類 / ゲノム / 転写因子 / 発生進化 / 有性生殖 / 性決定 / 多細胞化 |
研究概要 |
緑色植物において、「有性生殖」や「多細胞体制」などの発生進化上重要なイベントはシャジクモ藻類(Charophyta)からコケ植物への進化段階で起きたが、どのような分子基盤の多様化がこれらの発生プロセスに働いたのかは不明である。本研究では、単細胞シャジクモ藻ヒメミカヅキモと陸上植物の比較ゲノム解析から、陸上植物への発生進化の基盤となった分子機構とその進化過程の解明を目指す。そのために、ヒメミカヅキモの植物転写因子ファミリーに着目している。 2008~2009年度の特定領域および新学術領域研究(ゲノム支援)より、ヒメミカヅキモ概要ゲノム配列(+型;325Mbp x200, -型;340Mbp x200)とEST配列(5ライブラリー、30ステージ、172,441 ESTs)が解読された。これらに対し、植物転写因子ファミリーを特徴付ける様々なドメイン配列(DNA結合配列など)を投入して相同性検索を行った結果、70種類の転写因子ファミリーが検出された。いっぽう、緑藻類(Chlorophyta)およびコケ植物に対する同様の解析からは、それぞれ55種類、75種類の転写因子ファミリーが検出されており、コケ植物で認められる転写因子ファミリーのうち75%が単細胞藻類であるヒメミカヅキモで既に存在している事が示された。これらの中には、NAC、TCP、GRAS、ARF、AUX/IAA、EILなどの転写制御/転写調節因子ファミリーが含まれており、シャジクモ藻類からコケ植物への進化段階で、形態形成や植物ホルモンシグナル伝達などの転写ネットワークの多様化が生じている事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒメミカヅキモゲノム中の植物転写因子ファミリーの数と種類を明らかにする事は本研究テーマの柱のひとつであり、本年度内でこれを達成できた。またこのことによって、陸上植物で存在する転写因子ファミリーのかなりの数が、ヒメミカヅキモを含む単細胞接合藻の進化段階で既に存在している事を明らかにできた。いっぽう、当初予定されていたRNA-seq配列データの遅れにより各遺伝子配列の正確な推定が出来ず、アミノ酸配列の特徴解析とタンパク質系統解析、機能解析が予定よりも遅れた。そのため自己評価を(3)とした。
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今後の研究の推進方策 |
RNA-seq配列の蓄積を待ち、遅れていた上記の課題を実施する。また本研究では、ヒメミカヅキモ有性生殖関連遺伝子の発現を統合する遺伝子の一つとして接合型細胞特異的に存在する転写因子群にも着目している。ヒメミカヅキモ両接合型ゲノム情報の比較から、これまでに1種類の候補転写因子を得ている。上記の課題と併せ、性連鎖解析、形質転換による性転換試験、及び系統解析を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述の通りRNA-seq配列データの遅れにより当初予定していた研究が実施できず繰越金が生じた。翌年度以降の金額と合わせ、正確なアミノ酸配列の推定、系統解析、及び形質転換による機能解析(過剰発現、発現抑制解析)を行う。また、接合型特異的な転写因子については性連鎖解析を行う為にF1株を系統的に単離する。
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