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2013 年度 実績報告書

ゴリラのコミュニティ構造の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23770281
研究機関京都大学

研究代表者

井上 英治  京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70527895)

キーワードゴリラ / マイクロサテライト / 血縁構造 / 地域集団 / チンパンジー / 国際情報交換(コンゴ民主共和国)
研究概要

本研究は、野生ゴリラの糞から抽出したDNAを分析することで、おもに単雄集団を形成するゴリラの地域集団のオスの遺伝構造を解明することを目的としている。本年度は、昨年度に予備的解析を行なったカフジビエガ国立公園のヒガシローランドゴリラについて、詳細な解析を行なった。オスと判定された8集団50試料について、Y染色体上の可変性の高いマイクロサテライト領域の型判定をした。全部で7つのハプロタイプがあり、そのうち4つのタイプが複数集団で見つかった。複数のオスの型判定ができた集団は6集団であったが、そのうち5集団で集団内に多様性があった。また、試料収集を行なった2回の間で、収集された集団が異なる個体が2個体いた。いずれの個体も隣接集団への移籍であり、糞サイズから未成熟オスであると推定された。調査地域ではメスが未成熟の子供を伴って集団を移籍することが報告されており、集団内にY染色体の多様性が見られたのは、このような移籍が頻繁に起こっていることが原因であると考えられた。今年度に論文化したムカラバのニシローランドゴリラではY染色体のタイプに集団内の多様性はなかったため、未成熟オスの移籍はカフジほど一般的でないのかもしれない。一方、複数集団を含めたY染色体の多様性は両地域とも高く、ムカラバで示唆されたようにオスの遠い集団への移籍がカフジでも起こっていたのかもしれない。今後更なる調査が必要ではあるが、両地域とも隣接集団のオトナオスのY染色体のタイプは多様であり、ゴリラは父系コミュニティを形成していない可能性が高いと考えられる。一方、カフジで父系と考えられているチンパンジーの解析も行なった結果、予想通りY染色体の多様性は低かった。今回の研究から地域コミュニティレベルでのオスの遺伝構造はチンパンジーとゴリラでは異なると考えられ、これは初期人類のコミュニティを考える上で重要な成果である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] A leopard ate a chimpanzee : The first evidence from East Africa2013

    • 著者名/発表者名
      Nakazawa N, Hanamura S, Inoue E, Nakatsukasa M, Nakamura M
    • 雑誌名

      Journal of Human Evolution

      巻: 65 ページ: 334-337

    • DOI

      10.1016/j.jhevol.2013.04.003

  • [雑誌論文] Male genetic structure and paternity in western lowland gorillas (Gorilla gorilla gorilla)2013

    • 著者名/発表者名
      Inoue E, Akomo-Okoue EF, Ando C, Iwata Y, Judai M, Fujita S, Hongo S, Nze-Nkogue C, Inoue-Murayama M, Yamagiwa J
    • 雑誌名

      American Journal of Physical Anthropology

      巻: 151 ページ: 583-588

    • DOI

      10.1002/ajpa.22312

  • [雑誌論文] Assessment of landscape-scale distribution of sympatric great apes in African rainforests: Concurrent use of nest and camera-trap surveys2013

    • 著者名/発表者名
      Nakashima Y, Iwata Y, Ando C, Nkoguee CN, Inoue E, Akomo EO, Nguema PM, Bineni TD, Banak LN, Takenoshita Ngomanda YA, Yamagiwa J
    • 雑誌名

      American Journal of Primatology

      巻: 75 ページ: 1220-1230

    • DOI

      10.1002/ajp.22185

    • 査読あり
  • [学会発表] 野生動物の行動観察法入門-あなたの行動観察法はだいじょうぶ? 方法編:行動データ収集法

    • 著者名/発表者名
      井上英治
    • 学会等名
      第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度 合同大会
    • 発表場所
      岡山理科大学(岡山)
  • [学会発表] ヒガシローランドゴリラのオスの血縁構造

    • 著者名/発表者名
      井上英治,Augustin K. Basabose,Sebulimbwa Kamungu,Cisirika Murhabale,村山美穂,山極寿一
    • 学会等名
      第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度 合同大会
    • 発表場所
      岡山理科大学(岡山)
  • [学会発表] 野生チンパンジーにおける苦味受容体遺伝子の地域差と生態適応

    • 著者名/発表者名
      早川卓志,井上英治,Koops K,大東 肇,松沢哲郎,今井啓雄
    • 学会等名
      第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度 合同大会
    • 発表場所
      岡山理科大学(岡山)
  • [学会発表] ニシローランドゴリラの性格評定と関連遺伝子の探索

    • 著者名/発表者名
      村山美穂,Weiss A,井上英治,藤田志歩,安藤智恵子, 坪川桂子, 岩田有史,Chimene N,山極壽一
    • 学会等名
      第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度 合同大会
    • 発表場所
      岡山理科大学(岡山)
  • [図書] 野生動物の行動観察法―実践日本の哺乳類学2013

    • 著者名/発表者名
      井上英治、中川尚史、南正人
    • 出版者
      東京大学出版会

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公開日: 2015-05-28  

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