研究課題/領域番号 |
23770284
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
長岡 朋人 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (20360216)
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キーワード | 古人口学 / 未成年 / 江戸時代 / 死亡年齢推定 / ベイズ推定 / 齲蝕 / 古病理学 / 生物考古学 |
研究概要 |
本研究では、未成年人骨の生物考古学的研究として、大阪府堺市堺環濠都市遺跡喜運寺墓地から出土した未成年人骨を調査した。出土人骨の個体数推定は、頭蓋、骨盤、四肢長骨でもっとも残存する部位を最小個体数としたが、左右残存する部位については標識再補法に基づき、最尤個体数(本来の母集団を形成する個体数)を推定した。次に、本研究では歯の形成や萌出、四肢長骨の骨端の癒合、骨計測値に基づいて死亡年齢推定を行った。全身の部位でもっとも残存する部位は側頭骨であった。右107個、左107個であり、最小個体数は107体であった。左右各107個のうち、対で出土しているのは87対であり、この値から最尤個体数を算出すると126~136体(95%の信頼区間)であった。次に、側頭骨が残る107体のうち、歯や骨計測値から86体の死亡年齢の推定を行った。歯の残存しない個体については、側頭骨の計測値に基づいた回帰分析とベイズ推定から死亡年齢の推定を行った。その結果、出生前後の個体が占める割合が高く、埋葬人骨の95%以上が6歳以下であった。堺環濠都市遺跡から出土した江戸時代人骨の大部分は未成年であり、95%以上が6歳以下であった。この傾向は、既往の堺市内の近世墓地発掘調査事例も含めて、他の江戸時代の遺跡には認められないものである。例えば、17世紀後半の東京都の一橋高校地点遺跡から出土した人骨209体のうち、未成年は118体(56.5%)、5歳以下の個体は77体(36.8%)であった。すなわち、堺環濠都市遺跡(SKT871地点・喜運寺墓地)から出土した人骨の死亡年齢構成は、未成年、特に胎児や乳児の割合が高く、他の遺跡との違いは顕著であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
環濠都市から出土した江戸時代人骨に関する古人口学的研究に区切りをつけることができた。また、齲蝕などの古病理学的なデータも収集した。研究の過程において、未成年人骨の年齢推定に関わる新知見が得られ、その結果を法医学の雑誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
後は、未成年人骨の齲蝕に関わるデータの解析を終わらせ、国際誌に論文を投稿する予定である。また、愛知県東海市から出土した未成年人骨の分析に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文の執筆を行うため英文の校正費が必要である。また、未成年人骨の整理・調査のために国内旅費が必要である。
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