研究概要 |
本研究では、単為結果性や果実肥大性を示す4種類のトマト変異体を用いて、これら変異が蓄積した多重変異体を作出して、(1)トマトの単為結果性と果実肥大性の両性質がどこまで強化できるかを明らかにしたい。(2)また、変異体の中で両性質を同時に示すユニークな変異体(c)において、その原因遺伝子を明らかにすることを目的としている。平成24年度では以下の研究を実施した。 (1)4種類の変異体同士(a,b,c,d)を交配して、それぞれの二重変異体を作出し、それらの表現型、単為結果性、果実肥大性を評価した。その結果、それぞれの組み合わせの二重変異体では果実肥大性が上昇し、単為結果性も付与されていたことが分かった。とりわけ、 二重変異体(bc)では果実の肥大性が1.4~2.0倍程度まで増加していた。この二重変異体ではめしべを構成する心皮数が、単変異体と比較して著しく増加しており、これが果実肥大性を引き起こした主原因と考えられた。一方、二重変異体(bd)は極矮性を示し、果実を形成しなかった。 (2)変異体(c)の原因遺伝子同定を試みた。前年度までに野生株と変異体(c)間で存在するSNPを同定していたために、これらのSNPと表現型との連鎖解析を実施した。その結果、転写因子をコードする遺伝子内の非同義置換変異と変異体(c)の表現型が連鎖していることが分かった。一方、変異体(b)においても表現型と連鎖する1つの非同義置換変異を見いだすことができた。いずれも新規の遺伝子内の変異であり、果実肥大性の新たな知見が得られることが期待される。
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