研究概要 |
本研究は、「WILIS」由来のダイズわい化病高度抵抗性遺伝子Rsdv1同定を目的として、ウイルスベクター誘導によるジーンサイレンシング(Virus-induced gene silencing, VIGS)を利用した試験を行った。 VIGSにはキュウリモザイクウイルス(Cucumber mosaic virus, CMV)の改変ベクターを用いた。CMVベクターの分節ゲノムRNA3はウイルス株ごとに異なる植物種に対する感染能をもつため、まず、ダイズへの感染が報告されているウイルス株をRsdv1導入ダイズ系統に接種し、感染効率の良いウイルス株を選定した。その結果、SSV-D株で感染効率が良く、病徴観察が容易であったため、このウイルス株由来のRNA3配列を以降の試験に用いることとした。 CMV改変ベクターによるVIGSでは、標的遺伝子の部分配列を分節ゲノムRNA2へ導入することにより遺伝子発現が抑制されるが、その抑制程度はRNA2に導入する配列により異なる。本試験では、Rsdv1候補遺伝子の異なる部分配列をクローニングした3種類のVIGSベクターを作製し、Nicotiana benthamianaに感染、増殖の後、ダイズに汁液接種した。VIGSベクターの感染をELISA法により確認した後、接種14日後に上位葉からRNAを抽出し、標的遺伝子の発現量を定量PCRにより測定した。その結果、いずれのベクターを接種した場合でも、Rsdv1候補遺伝子発現量は非接種時の20~40%程度と低く抑えられていた。 以上の結果から、Rsdv1同定のための相補性検定に必要な「WILIS」由来のダイズわい化病高度抵抗性Rsdv1を有するダイズ系統におけるVIGSの系が確立された。
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