研究課題/領域番号 |
23780014
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
柏木 孝幸 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (40595203)
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キーワード | イネ / 倒伏抵抗性 / QTL |
研究概要 |
計画に基づき、昨年度と同じ条件で上位部稈の挫折抵抗及び形態学的特性に関与する量的形質遺伝子座(QTL)の解析を行った。コシヒカリ×カサラス間の染色体断片置換系統群(CSSLs)と両親品種をQTL解析のために水田圃場で栽培し、上位3節間について挫折抵抗(BS)、節間長、及び節間長径を出穂から6週目に測定した。CSSLについて各節間のBSと形態学的形質の相関関係をみると、第1節間ではBSと節間長及び節間長径の間で有意な正の相関、第2節間ではBSと節間長径の間で有意な正の相関、第3節間ではBSと節間長及び節間長径は有意な負と正の相関を示した。BSに関与するQTL解析の結果から、上位3節間すべての挫折抵抗を高めるQTLが第1、7、11染色体上に存在した。昨年度得られたQTLと比較した結果、2年間上位3節間の挫折抵抗を高めたQTLは第11染色体上のQTL(bsuc11)のみであった。bsuc11について機能解析するため、bsuc11を有するCSSL(CSSLbsuc11)を用いて上位節間の形態学的特性と成分を分析し、出穂以降のBSの経時的変化を測定した。CSSLbsuc11の第1節間において外径の長・短径と稈壁の厚さに有意な増加が見られたが、他の節間では変化が無かった。また、CSSLbsuc11の上位節間は乾物重が増加したが、非構造性炭水化物(NSC)の増加は無く、無機元素成分としてMnが有意に増加していた。BSの推移では、出穂後4週から6週間後にかけてコシヒカリは第1節間のBSが低下するが、bsuc11を有するCSSL(CSSLbsuc11)は高く推移した。第2と第3節間では、コシヒカリは出穂後2週目以降BSが低下するが、CSSLbsuc11は高く推移した。このことから、bsuc11は出穂後の上位節間挫折抵抗低下を抑制する効果があリ、NSC以外の成分による関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は上位部稈の挫折抵抗及び形態学的特性に関与するQTL解析、形態学特性及び化学成分の分析、出穂以降の挫折抵抗分析によるQTLの機能解析を計画した。その結果として、カサラスを遺伝資源として複数年上位3節間のすべての挫折抵抗を高めるQTLを見い出し、その機能は非構造性炭水化物蓄積によるものではなく、無機成分あるいは構造性炭水化物が関与していること、出穂後生じる挫折抵抗低下を抑制することを示した。また本研究で得られた上位部稈の挫折抵抗を高めるQTL、bsuc11、を有する近似同質遺伝子系統作成のため、F1系統を育成し、F2系統の種子を採取した。研究は当初の計画通り進んでおり、順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に基づき、bsuc11を有するCSSLを用いたQTLの機能解析、NILの育成を行う。QTLの機能解析ではbsuc11について形態学的特性、生理学的特性及び成分特性を解析する。さらにbsuc11の作用特性を明らかにするために出穂期から収穫期までの挫折抵抗の経時的変化を解析する。NILの育成に向けてbsuc11を有するCSSLのF2系統についてDNAマーカー選抜と表現型解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費はQTLの機能解析及びNIL作成のための多検体のDNAマーカー選抜と表現型解析に使用する。QTLの機能解析では主に解析に用いるプラスチック系器具に研究費を使用する。NIL作成では、DNA抽出から遺伝型解析に用いるプラスチック系器具、表現型解析に用いる器具に研究費を使用する。
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