研究課題/領域番号 |
23780015
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
鮫島 啓彰 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (50580073)
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キーワード | 陸稲 / NERICA / 根寄生雑草 / ストライガ / スーダン |
研究概要 |
前年度はライゾトロン法を用いて、NERICA18品種およびその親4品種について、ストライガに寄生されやすい(感受性)か寄生されにくい(抵抗性)かを評価し、NERICA5およびNERICA13をストライガ抵抗性品種と判断した。 本年度は、この2品種がストライガ抵抗性を示す要因を解析するため、宿主根系に接種したストライガの生育を詳細に観察した。NERICA5およびNERICA13の根系に接種したストライガの約70%が宿主根への侵入に成功した。一方、ストライガ感受性と判断された多くの品種で、ストライガの侵入率は70%以下だった。したがって、NERICA5およびNERICA13は、ストライガの根への侵入を防ぐのではなく、侵入したストライガの生育を阻害することで抵抗性を示すと考えられた。そこで、ストライガ種子から発生した吸器と呼ばれる組織の侵入部位を、光学顕微鏡を用いて解剖学的に観察した。NERICA5やNERICA13の根に侵入した吸器は、多くの場合、皮層で伸長が止まっていることを確認した。すなわち、これら2品種の根に侵入したストライガの吸器は、宿主根の維管束に到達する前に生育が止まっていた。 サブサハラ地域への導入が進むNERICA4は、ライゾトロン法による評価で、ストライガ感受性品種であると判断された。そこで、NERICA4をスーダン国内のストライガ汚染圃場で栽培したところ、ストライガ汚染の無い圃場で栽培した場合と比較して、穂重は31%、茎葉重は44%に低下した。また、圃場中の50%の株でストライガの寄生を確認した。ストライガ汚染のない圃場で栽培した場合、NERICA4は現地推奨品種と同等の収量(3 t/ha以上)を示した。以上の結果から、感受性品種NERICA4はスーダン現地の栽培環境に適応しているが、ストライガ汚染地域への導入には注意が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ストライガ汚染地域での安定した陸稲NERICA栽培につながる知見として、ストライガ抵抗性NERICA品種の探索と、ストライガ抑制とイネ生育確保を両立する潅水指針の作成を目指している。 ストライガ抵抗性NERICA品種の探索については、当初の計画どおりNERICA18品種に対するストライガの寄生率の調査が完了した。その結果、NERICA5およびNERICA13の2品種がストライガ抵抗性を示すことを確認した。さらに、解剖学的観察により、この2品種がストライガ抵抗性を示す要因の解析が進行している。また、サブサハラ地域で導入が進められているNERICA4を含む、いくつかのNERICA品種がストライガ感受性であることを確認した。 スーダン現地の圃場で、ストライガ抵抗性品種NERICA5およびNERICA13と感受性品種NERICA4を栽培した結果、ストライガ被害が無い場合には、NERICA4がより現地環境に適応している(多収である)ことが明らかになった。したがって、感受性品種のストライガ被害を軽減させる肥培管理技術の重要性を認識した。また、この圃場栽培において、今後の研究推進に必要な種子量を確保した。 ストライガ汚染の無い現地圃場において異なる潅水間隔でNERICA4を栽培し、適切な潅水条件についての知見を得ている。今後、ストライガ汚染圃場でも、ストライガ抵抗性品種NERICA5・NERICA13や現地の環境に適したNERICA4を用いた栽培試験を行い、肥培管理を組み合わせた総合的なストライガ防除方法の評価を行う基盤が整った。
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今後の研究の推進方策 |
ストライガ汚染圃場において、ストライガ抵抗性品種NERICA5およびNERICA13や現地環境に適応しているNERICA4を、異なる潅水間隔や施肥量で栽培する。イネの生育や養分吸収およびストライガの生育を解析することで、総合的なストライガ防除方法を検討する。 スーダン現地で多収品種として推奨されている品種が、NERICA5およびNERICA13に匹敵するストライガ抵抗性を持つことを確認している。この品種のストライガ抵抗性機構の解明をめざし、ライゾトロン法および光学顕微鏡を用いた解剖学的観察を行う。 地上部の伸長を一旦開始したストライガが、生育を止め、褐変・枯死する現象をライゾトロン上で観察した。予備的な観察では、この状況のストライガの吸器は、宿主根の中心柱に侵入していた。したがって、一度寄生が成立したストライガの生育を阻害する新しいタイプの抵抗性である可能性があるため、この現象の再現性を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額62,941円(58,820円は平成25年2月13日~15日の国内旅費として、4,121円は平成25年3月5日に物品調達費として使用)は、平成25年4月30日に支払いが予定されている。
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