研究課題/領域番号 |
23780017
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
松村 篤 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (30463269)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 温室効果ガス / 土壌微生物バイオマス / 緑肥 |
研究概要 |
緑肥すき込み後の有機物分解に伴う炭酸ガスおよび亜酸化窒素発生の量的評価と土壌微生物相の動的解明を明らかにするため研究に取り組んだ。今年度は土壌から発生するCO2およびN2Oの測定法の確立と2)農耕地土壌における微生物相およびバイオマス量の変化をMIDI法によって分析した。 まず1)の測定法については土壌から採取したガス中に含まれるCO2およびN2O濃度を同時に測定できる装置を作り、比較的短時間で分析できる方法を確立した。この装置を使用して化学窒素肥料として硫安、硝安を施用した土壌から発生するCO2とN2Oを調査したところ、硝安を施用した場合では施用後4日目からCO2とN2Oともに発生量が確認され、硫安よりも明らかに高いことが確認された。N2Oの発生は微生物による2つの過程、すなわち嫌気的条件で起こる脱窒と好気的条件で起こる硝化によって促される。前日の降雨によって土壌が嫌気的な条件であった場合には、硝安を施用した土壌から高濃度の亜酸化窒素が発生した。一方、硫安を施用した土壌からもN2Oの発生は確認されたが、その濃度は低く、硝化によるN2Oの発生量は脱窒の場合と比較して低いことが考えられた。また人工気象器内でマメ科緑肥としてセスバニア・ロストラータ、イネ科緑肥としてソルガムをすき込み材料としてインキュベート試験を行いCO2とN2Oの発生量を比較した。その結果、CO2の発生量は両者に差がみられなかったが、N2Oに関してはセスバニアの方が5倍程度高くなった。このことから窒素含有率が高いマメ科緑肥からは微生物による分解の過程で多くのN2Oが発生することが示唆された。 2)のMIDI法による土壌微生物相およびバイオマス量の測定は前作にラッカセイ、後作にコムギを栽培した圃場の土壌を対象として経時的に分析し、細菌、一般糸状菌、アーバスキュラー菌根菌および原生生物について量的に評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
土壌から採取したガス中に含まれるCO2とN2Oを同時に安定して分析する方法を検討し、短期的な圃場試験や培養実験において分析可能であることを確認した。しかし、装置の開発に時間を要したため、本来実施する予定であったMIDIによる土壌微生物相やバイオマス量の解析との関係について圃場レベルで明らかにすることができなかった。今年度の夏場に実施する試験において、両者の関係を詳細に検証する。
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今後の研究の推進方策 |
C/N比が異なる緑肥すき込みによって発生するCO2およびN2Oを調査するために、現在、マメ科緑肥としてヘアリーベッチ、イネ科緑肥としてエンバクを栽培している。今年度5月中旬にこれらの緑肥を圃場にすき込み、後作物としてトウモロコシを栽培し、緑肥すき込みからトウモロコシ収穫までの期間を通して、経時的に土壌由来のCO2およびN2Oの発生を量的に評価する。また併せて土壌養分の分析や微生物バイオマス量の変化を調査する。さらに夏作緑肥としてセスバニア・ロストラータおよびソルガムを6月上旬に播種し、後作物のコムギとの作付体系において、同様の研究を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
CO2およびN2Oの分析時に必要となる消耗品として土壌由来のガスを採取するテドラーバッグ、温度計、シリカゲル、石灰ソーダを購入する。さらにN2Oの発生は土壌の物理性や土壌水分条件によって大きく左右されることから、土壌物理性測定装置およびTDR式土壌水分センサーについても購入予定である。また分析作業補助の謝金や成果発表のための学会参加費や学術論文の投稿料に使用する。
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