本研究は、これまであまり顧みられることのなかった砂浜海岸の自然環境の保全とレクリエーション利用の適正な管理について、特に生態系サービスの視点から、第一に砂浜海岸の環境に対する利用者や沿岸住民等の認識を明らかにし、第二に我が国の砂浜海岸の自然環境の適正な評価手法について探り、第三にレクリエーション利用等の適正な管理手法について検討し、長い間、国土保全・開発・レクリエーション利用・自然保護の狭間におかれてきた砂浜海岸の適正な保全管理システムについて提言することを目的とした。 第一の砂浜海岸の環境に対する利用者や沿岸住民等の認識については、海岸に対するイメージや利用頻度、生態系サービスの認知度等を地域住民や海岸利用者、大学生を対象としたアンケート調査から、砂浜環境に対する関心の低さとともに文化的サービスへの期待の高さが明らかとなった。 第二の砂浜海岸における自然環境の適正な評価に関しては、行政界としての海岸で考えるのではなく、生態基盤としての連続性に配慮した範囲で評価することが必要であり、景観を構成する植生だけでなく、地下水等の生態系サービスも考慮する必要があることが明らかとなった。 第三のレクリエーション利用等の適正な管理手法については、これまでに得られた第一、第二の知見から海岸の多様な資源を適正に評価し、その管理を行うには、従来の複数の管理主体から構成される行政を中心とした管理では対応できないことが懸念され、地域住民や利用者を含めた多様な主体からなる「新しい公共」の概念に基づくガバナンスが重要であることを提案し、その実践として石狩海岸フォーラムを開催した。
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