研究課題/領域番号 |
23780026
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
山崎 聖司 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (30363295)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | キュウリ / 性分化 / エチレン / プログラム細胞死 / MMP |
研究概要 |
1.1-メチルシクロプロペン(1-MCP)がキュウリの性分化に及ぼす影響の解析キュウリの性表現は植物ホルモンの一つであるエチレンの影響を受けることが知られている。すなわち,エチレン処理により雌花の出現が促進され,逆に,エチレン阻害剤処理により雄花の出現が促進される。これまでに,キュウリの性分化に影響を及ぼすエチレン阻害剤として,硝酸銀やAVGなどが使用されてきたが,安全性に問題があった。一方で,1-MCPは,安全性の高い気体のエチレン作用阻害剤であり,他の植物では,果実や切り花の鮮度保持に有効であることが報告されている。しかしながら,キュウリの性分化に及ぼす影響は不明である。そこで,雌性型キュウリ(M-F-)を用いて1-MCPがキュウリの性分化に及ぼす影響を解析した。第4葉展開期のキュウリ植物体を,密閉容器に入れ,様々な濃度の1-MCP処理を行った。その結果,雄花形成の促進が若干認められた。また,処理直後には,いくつかの植物体において,茎の基部が,ねじ曲がるような現象が認められた。2. キュウリの性分化におけるプログラム細胞死(PCD)の関与の検討 キュウリの性分化に伴う雄蕊または雌蕊の発育抑制におけるPCDの関与を調べるために,Cs1-MMPの発現解析を行った。その結果,Cs1-MMP遺伝子は,雄花では雌蕊が退化した領域で,また,雌花では雄蕊が退化した領域で強い発現を示した。このことから,雄花・雌花ともに,発育しない生殖器官は,PCDによって退化することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,安全かつ効率的な農業の確立を目指し,雄蕊と雌蕊の発育を分子レベルで人為的に制御する技術の開発を究極の目標として,植物の性分化の分子メカニズムを解明する。そのために,最も多様な性表現型を示す品種が存在するキュウリを材料に用いて研究を行うものである。1.1- メチルシクロプロペン(1-MCP)がキュウリの性分化に及ぼす影響の解析 ガラス室において,エチレン作用阻害剤である1-MCPがキュウリの性分化に及ぼす影響に関する生理実験を初めて実施し,性分化への影響の有無および副作用の有無を明らかにすることができた。2. キュウリの性分化におけるプログラム細胞死(PCD)の関与の検討 キュウリの性分化に伴う雄蕊または雌蕊の退化におけるPCDの関与を,分子レベルで示唆するデータを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,研究計画に沿って研究を進めていく。1. 1-メチルシクロプロペン(1-MCP)がキュウリの性分化に及ぼす影響の解析 副作用を示すことなく,キュウリの性分化に影響を及ぼすための,1-MCPの処理方法や処理時期について検討を重ねる。2. キュウリの性分化におけるプログラム細胞死(PCD)の関与の検討 PCD関連遺伝子とともに,雄花または雌花で強い発現を示す遺伝子群について調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き,研究計画に沿って研究費を使用する。すなわち,ガラス室(屋外)での生理実験,研究室(屋内)での分子生物学実験,成分分析などに使用する予定である。
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