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2011 年度 実施状況報告書

日本独自の都市景観が作る生物多様性維持機構:鳥類生息環境としての神社と寺の異質性

研究課題

研究課題/領域番号 23780028
研究機関岩手医科大学

研究代表者

三上 修  岩手医科大学, 共通教育センター, 講師 (10404055)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2015-03-31
キーワード都市の鳥類群集 / 社寺林
研究概要

日本独自の都市景観を構成している神社と寺は、社寺林を有しており、都市の生物にとって重要な生息地となっている。この社寺林は、これまでその言葉どおり、ひと括りにして扱われてきた。しかし、「寺」と「神社」には大きな違いがある。寺は仏教施設であり、門からお堂へと続き、その周囲には墓地がある。一方、神社は神道の施設であり、鳥居から入り狛犬を経てお社がある。寺には、敷地に住職が住んでいるのに対し、神社は神域という意識があるためか、神職は通ってくるのが普通である。寺は住職が住まなければならないため最小サイズもおよそ決まっている。一方、神社はかなり小さいものまである。持っている林・森の質も異なる。寺の敷地に大きな森があることは少なく、普通は、墓地がその大半をしめ、緑地は小さなものがあるだけである。一方、神社には、大径木が神木としてあり、さらには鎮守の森として在来種を豊富に含んだ森が残っていることが多い。 そこで本研究では、寺と神社がもつ異質性を鳥類の生息環境として評価して、なぜそういった違いが生まれるのかを、文化(宗教、歴史等)の観点から説明し、寺・神社それぞれが日本の都市において、独自の生物多様性維持機構として働いていることを明らかにすることを目的としている。 2011年度は、北東北の盛岡、秋田、弘前の各都市の寺林、社林にて、冬季にポイントセンサスにより鳥類調査を行った。同時に、それぞれの社寺林の環境データも取得中であり、これらを合わせて解析する予定である。 また、そもそも、都市にどんな鳥類がいるかを明らかにするため、既存のデータを解析し直して、どういった鳥が都市鳥になりうるのか、そして、都市の鳥類の個体数や種数は、周囲の環境と比べて多いのか少ないのかを解析した。それらの結果は、論文として完成し、現在、投稿中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の研究計画では、2011年度には、夏季(5・6月)と冬季(12月・1月)に、東北のいくつかの都市の社寺林で、鳥類の生息調査を行う予定であった。この理由は、夏季は鳥類にとって、繁殖期にあたり、一方、冬季は越冬期にあたるので、それぞれの季節における、鳥類の生息地としての社林、寺林の役割を明らかにすることを目的としていたからである。 しかしながら、2011年度は、研究費を柔軟に使えるようにするための基金化の法案の通過に時間がかかったため、実際に科研費の内定が発表されたのが5月中旬ごろだった。このため、申請時に予定していた夏季の鳥類調査が十分に行えなかった。それゆえ、その分、遅れが生じた。 2011年度にできなかった夏季の調査は、2012年度に、当初の予定を1年繰り越して行う予定である。これらの調査地点の冬季の記録については、予定通り行えたので、夏季と冬季の結果を合わせて解析する予定である。

今後の研究の推進方策

2012年度は、まず前述したとおり2011年度にできなかった夏季における鳥類生息調査を行う予定である。冬季についてはすでにデータがあるので、夏季の調査データと合わせて、北東北における、社林と寺林の鳥類生息地としての違い、また、その季節的な違いを秋ごろにまでに解析していく予定である。 そして、その結果を今度は北東北以外の別の地域の都市で見てみる。というのも寺と神社の環境としての異質性は、地域によって異なると推測されるからである。たとえば東京は、寺の緑地が他地域にくらべて広い傾向がある。こういった違いは、各地域の歴史的な要因によると考えられる。であれば、鳥類の生息地としての、寺と神社も、やはり地域によって異なると予測される。 そこで、2012年度の冬季には、北東北の都市の社寺林とは異なる特徴を持つ地域をGIS・現地調査を併用して3か所選びだし、同様に、生息鳥類の調査を行う。 このようにして、日本の全てというわけにはいかないが、寺と神社の鳥類に対する役割にも地域性があることを示す予定である。いまのところ、関西および九州の都市を調査地として検討している。

次年度の研究費の使用計画

本研究では、実際に鳥類がどのように、社林、寺林を利用しているかを明らかにする必要がある。具体的には、営巣をしているか、営巣しているとしたら、どんな樹種を利用しているのかである。また、どのような餌をどのような方法で採っているかという情報も必要である。これらの観察には肉眼では限界があるし、また、鳥類との距離が近いと、自然な状態での行動観察ができない。そこで、遠距離から、そういった鳥類の行動を記録するために、ビデオカメラを購入する予定である。また、すでに環境・景観撮影用に購入したカメラに装着する望遠レンズを購入予定である。 これらは、記録を取るためにも必要だが、プレゼンテーションや論文の説得力を上げるため、そしてアウトリーチ活動の資料を得るためにも必要である。 また、現地調査にいくための調査旅費を計上している。前述したように、鳥類の生息環境としての、社林、寺林は、地域によって異なる可能性がある。事前に地図情報や航空写真により、北東北とはことなる特徴をもつ地域を選びだす。そして、現地で予備調査を行い、調査地として適してれば、本調査へと続けていく予定である。前述したとおり、関西および九州の都市を調査地として検討している。

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公開日: 2013-07-10  

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