本研究の目的は、都市環境において、社寺林が鳥類の多様性にどのように影響するかを明らかにすることにある。世界的に都市の面積が拡大するなか、都市の内部においても自然を残す必要性が求められている。なぜなら、それによって地域全体の生物多様性を高められる可能性があり、また、市民が自然に触れ合う機会を持つことで、持続可能な社会の形成につながると考えられているからである。 その際、本研究では、特に寺と神社の違いに着目した。寺も神社も、それぞれ林を内包し、都市における鳥類の生息場所となっている。しかし、細かく見ると、これら2つの林の質には、さまざまな違いがある可能性がある。たとえば、寺は、必ず人が住んでおり、その住職によって管理された庭が形成されている。一方、神社は、よほど大規模でなければ敷地内に人は住んでおらず、自然の林が残っている場合が多い。そこで、寺林・社林が、それぞれどのような貢献を都市の鳥類多様性に与えているかを明らかにしようと考えた。 最終年度は、調査と3つの発表を行った。調査は、引き続き、関東、東海の社寺林において、夏季と冬季の調査を行った。発表は、2014年8月に東京で行われた国際鳥学会において、ポスター発表を行った。また同時期に行われた日本鳥学会において、都市の緑地と保全に関する自由集会のコメンテータをした。さらに2015年3月に行われた生態学会において、都市の生物多様性に関わる企画集会の企画者として、発表を行った。
|