研究概要 |
多年生花卉の周年開花を可能とするには、冬季の休眠調節が必須である。本研究では、人為的な休眠調節技術の確立を目標に、リンドウをモデルとした越冬芽の休眠調節機構の解明を目標としている。 平成24年度は、ゲンチオオリゴ糖代謝経路の特定と、越冬芽の休眠制御におけるゲンチオオリゴ糖の作用機構の解明を目指した。本オリゴ糖の分解酵素(β1,6グルコシダーゼ)は、複数のカラムを用いて精製を行い、候補蛋白質を得ることに成功したが、配列決定には至らなかった。そこで、リンドウESTからグルコシダーゼの配列情報を取得し、休眠誘導~休眠~萌芽までの経時的な発現を調査した。オリゴ糖と挙動が一致するものを選抜し、現在、融合蛋白質を作成している。また、13C標識グルコース並びにシュクロースを用いた実験から、これら糖を出発点にゲンチオビオースとゲンチアノースが合成される経路の存在が明らかとなった。 作用機構の詳細を明らかにするため、オリゴ糖を処理した培養越冬芽のメタボローム解析を行った。解析にはLC-Q-TOFMSを使用し、数千のピークを得ることに成功した。顕著な変動が見られた代謝物群をMS/MS解析したところ、ゲンチオオリゴ糖由来と予想される糖類が含まれており、休眠制御との関与が推測された。さらにターゲットメタボローム解析から、オリゴ糖によって萌芽が誘導される際には、エネルギー物質と共に特定の代謝経路が活性化する結果が得られた。本代謝経路に関連する代謝物と酵素遺伝子を詳細に調べたところ、オリゴ糖処理によって明らかな蓄積並びに発現誘導が観察された。圃場栽培されたリンドウ越冬芽でも同様の結果が得られたことから、観察された現象は越冬芽の萌芽メカニズムの一部であり、その調節にゲンチオオリゴ糖が関与していることが強く示された。
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