研究課題/領域番号 |
23780030
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
菊地 郁 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜茶業研究所・野菜育種・ゲノム研究領域, 主任研究員 (30360530)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 果実発達 / 光合成産物 / 転流 / ポジトロン |
研究概要 |
葉から取り込まれて果実へ移行する光合成産物の動態に、前歴としての明期の長さがどのように影響するかについて検討した。試験個体を48時間・28℃の連続照明下で維持した後に5MBqの11CO2を果実下2枚目の葉に処理し、処理葉をPETISで2時間測定した。葉の測定終了30分後、100MBqの11CO2を同様の葉に処理し、果実を3時間測定した(長時間照明処理試験)。上記同一個体を続けて36時間・18℃・連続暗黒下に維持し、その後30分間の照明処理を行った後に、上記と同様の測定を行った(短時間照明処理試験)。その結果、11Cが葉に取り込まれてから葉柄へ到達する時間および葉柄から送り出される時間は長時間照明処理後の方が短時間照明処理後よりも早い事が明らかになった。さらに、11Cが果実へ到達する時間や移行量も長時間照明処理後のほうが早く多い事が示された。このような傾向は長時間-短時間照明処理の順番を逆にした個体でも同様であった。以上の事から、照明処理時間の長さ(明期の長さ)は葉からの光合成産物の送り出し量や移行速度に影響し、果実への光合成産物の流入量や速度を大きく変化させていると考えられた。今回得られた結果は、CO2を効率良く葉から果実へ移行させるタイミングは長時間明期に維持した後であり、1日のサイクルとしては朝方よりも夕方が有効であることを示唆している。通常、施設園芸でCO2処理が行われるタイミングとして、日本では夜間暖房との併用を兼ねて朝方に処理する事が多い。一方、施設園芸先進国であり、高収量栽培を実現させているオランダでは夕方にCO2処理を行うのが一般的であり、今回の結果はこの効果を裏打ちするものであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本試験でトレーサーに使用しているポジトロン放出核種(11C)の製造には加速器が必須であるため、(独)日本原子力研究開発機構と共同研究を結び、高崎量子応用研究所(高崎研)の加速器により製造・実験を行っている。しかし、昨年3月11日に発生した東日本大震災の影響により大規模な節電対策がとられたため、高崎研の加速器も長期間停止しした。そのため試験回数が大幅に減少し、試験計画に後れを来した。具体的には、今年度は上記の'研究実績の概要'に記載した内容に加えて、明期の長さを3,6,12時間等のように短時間間隔で多数設定し、その前歴が光合成産物の動態に及ぼす影響を調査する予定であったが、全ての処理区について実施することができず、1日の動態変化を推察するまでには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度実施できなかった処理区の試験を行い、果実へ移行する光合成産物の動態(速度・量、等)が1日のうちでどのように変化するかを明らかにする。またその結果をもとに高濃度のCO2処理を行い、11CO2の固定量や動態がどのように変化するかについて検討することで、効率的なCO2処理方法の開発を行う。東日本大震災の影響により試験計画に遅れが生じており、今年度も、節電対策等によって同様の遅れが生じる可能性がある。その場合の対応策として、当初の予定通り試験が進捗しなかった場合には、予定を繰り下げて研究期間を1年間延長する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は交付申請時の計画通り、物品費・旅費・非常勤職員の雇用費に使用する。なお、次年度使用額232,045円は、東日本大震災の影響により試験回数が減少したことから、当初予定していた旅費を下回ったために発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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