研究概要 |
ナスを昼(13h)/夜(11h)温度を28/18℃に設定した人工気象室内で12cmポットを用いて育成した。第1花を開花日に受粉し、開花後2週間程度の個体を試験に供試した。明期開始(ライト点灯)から5,30,180,360,420,600,780分後に20MBqの11CO2を第1果実の直下葉にパルスで処理した。試験は①5,180,360分後処理 ②30,180,360分後処理、③420,600,780分後処理の3つ分けて行い、各試験は同一個体を用いて行った。 試験①において、明期開始5分後に11CO2を処理した場合は固定量が他の区に比べて少ないのが観察された。このような傾向は試験②の明期開始30分後の処理でも見られた。 試験①、②とも、11CO2の固定量が低下した5分、30分後の処理では葉からの移行速度が若干低下した。しかし、移行量には処理間で大きな差が見られなかった。試験③において、固定量は420分後処理で一番高く、600分および780分後処理では低下する様子が見られた。試験③で、処理直後に暗黒下となる780分後処理では移行速度や量が大幅に低下するのが示された。 前年度の結果では、連続照明下に長く維持した後のほうが光合成産物の転流量・速度ともに高まるとの結果であったが、13時間といった標準的な日長を細かく区切って観察した場合は、明期開始直後(5~30分)以外は転流速度や量に大きな違いは見られないことが明らかとなった。これは、前年度の試験が連続暗黒下36時間(48時間)、連続照明下48時間(36時間)という極端な条件であったためと考えられるが、日照などの条件によっては、葉における炭水化物の蓄積状態が大きく変動し、転流量・速度に影響を与える可能性も示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
上記の理由により予定通りに試験が進捗しなかったため、研究期間を1年間延長することとした。次年度は前年度同様13時間日長区を設定し30,180,360,420,600,780分後に測定を行うが、測定ごとに温度を変える事により、短時間の温度変化が光合成産物の動態に及ぼす影響について評価を行う。この際、温度条件は既知の栽培試験を参考に設定する。 また、上記試験結果について国際学会において成果の発表を行うとともに、論文投稿に着手する。
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