研究課題/領域番号 |
23780038
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安藤 杉尋 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10442831)
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キーワード | 抵抗性タンパク質 / 環境応答 |
研究概要 |
前年までに、キュウリモザイクウイルス黄斑系統[CMV(Y)]抵抗性タンパク質RCY1と相互作用するタンパク質を酵母ツーハイブリッド法によって探索し、候補遺伝子としてWRKY70を単離した。WRKY70は病害応答のみならず、乾燥ストレス等の非生物的ストレスにも重要な機能を持つことが示唆されているため、本年度は、RCY1-WRKY70相互作用の確認とRCY1によるCMV抵抗性シグナル伝達機構におけるWRKY70の機能解析を重点的に行った。まず、RCY1-WRKY70の相互作用を確認するためNicotiana benthamianaを用いアグロインフィールトレーションによって一過的に発現させたタンパク質について、免疫共沈による相互作用の検証を行った。その結果、全長RCY1タンパク質を用いた場合はWRKY70との相互作用は認められなかったが、CC-NBドメインのみを発現させた場合では相互作用が確認された。さらに、WRKY70の発現はCMV(Y)接種により誘導され、RCY1-HA/wrky70-1ではCMV(Y)接種後の過敏感細胞死や活性酸素生成には影響は認められなったが、RCY1-HAに比べ防御関連遺伝子PR1の発現が減少し、接種葉におけるウイルス増殖量が増加することが明らかとなった。以上により、WRKY70のRCY1シグナル伝達への関与が示唆された。 一方、免疫共沈によるRCY1-HAの相互作用因子の探索の再検討を行い、RCY1-HAと同サイズの相互作用因子の存在を確認するため、LC-MS/MSによるアミノ酸配列解析を行った。その結果、DEAD-like helicase, RNA-metabolising metallo-beta-lactamase, Lipoxygenase と相同性のあるタンパク質の存在が明らかとなった。今後、その相互作用について検証を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、当初の研究計画の通りには研究が進まなかったため、その対応策に従って研究を遂行している状況である。具体的には酵母ツーハイブリッドスクリーニングによってWRKY70を候補遺伝子として得た。そこで遅れを取り戻すべく、WRKY70のT-DNA変異体とRCY1-HAの交配や過剰発現体の作成を行っていたが、インキュベータの故障などが重なり、研究計画を延長することとなった。しかしながら、一方、新たに相互作用因子の候補を3種得ることができた。既にT-DNA挿入変異体の入手を行い、解析の準備に入っており、今後の解析により、相互作用が確認できれば、新たな展開が期待できると考えている。従って、現在の研究の達成度はやや遅れている状況であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
酵母ツーハイブリッド法によって、RCY1相互作用因子の候補として単離したWRKY70について、過剰発現体についてCMV感染時の過敏感細胞死(HR)の有無、ウイルスの増殖の変化、活性酸素生成レベルの変化、Pathogensis-related protein (PRタンパク質)遺伝子の発現レベルの変動などの解析を行い、T-DNA挿入変異体の結果と合わせて考察する。また、T-DNA挿入変異体、過剰発現体を用いて、低温ストレス耐性への影響を解析する。 一方、新たに得られた候補タンパク質(それぞれDEAD-like helicase, RNA-metabolising metallo-beta-lactamase, Lipoxygenaseと相同性のあるタンパク質)については、相互作用の確認をNicotiana benthamianaの一過的発現系を用いた免疫共沈によって行う。相互作用が確認できた場合には、T-DNA挿入変異体とRCY1-HA形質転換変異体との交配を行い、WRKY70の場合と同様の解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究期間を延長したため、次年度は繰越金を用いて研究を行う。遅延した研究は形質転換体の作成や変異体等の交配実験であり、今後、作成した植物体を用いて遺伝子発現解析、病害耐性解析、環境ストレス耐性解析をする必要がある。従って、繰り越した研究費はこのために使用する分子生物学研究試薬・キット類の消耗品や一般試薬、ガラス器具、プラスティック器具等の消耗品などを購入する費用として使用する予定である。また、成果の公表や情報収集に必要な旅費等の経費も予定している。
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