研究概要 |
本研究は、キュウリモザイクウイルス抵抗性タンパク質RCY1と相互作用する因子を探索し、その機能解析から生物的/非生物的ストレスのクロストークについて新たな知見を得ることを目的に行った。まず、Blue-native PAGEによるRCY1タンパク質複合体の検出を行ったところ、150~200kDaのRCY1タンパク質複合体の存在が示唆された。さらに、免疫共沈によるRCY1相互作用因子の探索及びLC-MS/MSによるアミノ酸配列解析からDEAD-like helicase, RNA-metabolising metallo-beta-lactamase, Lipoxygenase と相同性のあるタンパク質が候補として検出されたが、酵母Two-hybrid法(Y2H)などの解析からRCY1の相互作用因子ではないことが判明した(最終年度)。 一方、Y2Hによる相互作用因子の探索からRCY1のCC-NBドメインと相互作用する候補因子として、WRKY70が単離された。そこで、Nicotiana benthamianaの一過的発現系を利用した免疫沈降によりRCY1-WRKY70相互作用の確認を行った結果、全長RCY1タンパク質とWRKY70の相互作用は認められないが、CC-NBドメインのみを用いた場合では相互作用が確認された。また、WRKY70の発現は抵抗性応答時に誘導され、wrky70欠損変異体では防御関連遺伝子PR1の発現減少に伴い、ウイルス増殖量が増加することが明らかとなった。以上により、特定の条件下においてRCY1とWRKY70が結合することで抵抗性シグナルが制御される可能性が示唆された。WRKY70は病害応答のみならず、乾燥ストレス等の非生物的ストレスにも重要な機能を持つことから、生物的/非生物的ストレスのクロストークのキーとなる可能性が考えられる。
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