研究課題/領域番号 |
23780042
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
中村 正幸 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (90404475)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
平成23年度は、アブラナ科植物黒腐病細菌(Xanthomonas cmapestris pv. capestris)に認められる新規酵素群の遺伝子クローニングとタンパク質発現解析を行った。まず、フルシークエンス済みであるATCC33913株の遺伝子情報を基に、プライマーを設計し、XccHypBA1(xcc2394)およびXccHypBA2(xcc2399)をPCR増幅後、pET発現系を用いたタンパク質の発現を試みた。その結果、XccHypBA1は、大腸菌によるタンパク質発現に成功した。その機能を解析したところ、β-アラビノオリゴ糖鎖を分解することが明らかとなり、特にβ-Ara2(2糖のアラビノース)に対し強い活性を示し、単糖のアラビノースを遊離した。このことは、β-アラビノオリゴ糖鎖が自然界では、植物の細胞壁を構成しているエクステンシンやレクチンのみに存在していることを考慮すると、XccHypBA1は、本細菌の植物組織内での炭素源利用に関わり、感染直後の貧栄養下における定着や植物細胞壁の崩壊を促す働きがある可能性が出てきた。また、これまで、植物病原細菌由来アラビノシダーゼには、α結合した糖鎖を分解する酵素は知られていたが、β型を分解する酵素は見つかっておらず、本研究が初めての発見となり、植物病理学上重要な知見となった。一方、XccHypBA2は、分子量が大きいこともあり(150KDa)いくつかのpET発現系においても、大腸菌内に封入体が形成され、本年度は、活性のある状態での発現に成功しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
XccHypBA1のタンパク質発現には成功し、機能も特定できたが、XccHypBA2に関しては、可溶性タンパク質の発現が今回得られなかった。これは、XccHypBA2の分子量が非常に大きいため大腸菌内でのコンフォメーションがうまく行かず、封入体を形成してしまうのが原因であると考えられる。今後、発現ベクターと宿主の検討を行い、遅れを取り戻したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、機能の特定できたXccHypBA1遺伝子の破壊株を作成し、本遺伝子がXanthomonas cmapestris pv. capestrisの病原性に関わっているのかどうかを明らかにしたい。次に、XccHypBA2のタンパク質発現に関しては、pET発現系以外の可溶化を促すような発現用プラスミドの検討(pColdなど)と宿主の検討なども行い、可溶性タンパク質の発現を目指す。XccHypBA2は、エクステンシン上の糖鎖を直接分解し、病徴進展に関与している可能性があるため、何とか本タンパク質の発現を成功させ、病原性との関わりを明らかにしたい。また、エクステンシンを直接分解できる可能性のあるメタロプロテアーゼについても調査を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
XccHypBA2のタンパク質発現のため、新たな発現プラスミドが必要になる。その他、遺伝子クローニングに必要な試薬類、タンパク質精製用キット、遺伝子発現解析に必要な試薬類等が必要となる。また、成果が得られた場合、学会発表、外国語論文の校閲費、論文投稿料なども必要である。
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