研究課題/領域番号 |
23780044
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
辻 元人 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (50381934)
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キーワード | 炭疽病 / 遺伝子 / 組み換え / 極性 / 病理学 / 形態形成 / 付着器 / 糸状菌 |
研究概要 |
ウリ類炭疽病菌の宿主植物への感染には感染器官の分化が必須である。これまでに、活性酸素生成や細胞極性の制御に関わる2種の足場タンパク質CoBem1、CoKel2が本菌の感染器官分化に重要な働きをすることがわかってきた。昨年度、両タンパク質と相互作用する候補因子の一つとして、Rho型Gタンパク質Cdc42の機能を明らかにした。本年度は、 1.炭疽病菌のゲノム中にCdc42と極めて高い相同性を示すもう一つのRho型Gタンパク質をコードする遺伝子の存在を確認した。本遺伝子をCoRac1と命名し、その機能解析を行った。corac1破壊株の性状を調べたところ、寒天培地上で中心部が隆起したコロニーを形成し、顕著な生育遅延を示した。また分生子も球状の異常形態を示した。発芽試験の結果、分生子の発芽、付着器形成は確認されたが侵入菌糸の形成は見られなかった。また胞子と付着器の連結部位の顕著な肥大が認められた。キュウリ葉への有傷、無傷接種の結果、いずれも病斑形成は認められなかった。また、それらの表現型異常が、破壊株へのCoRac1遺伝子の再導入により回復することを確認した。以上の結果から、CoRac1は本菌の菌糸生育や細胞分化、病原性に広く関与していることが明らかになった。 2.CoKel2との相互作用が予想される2種の候補タンパク質CoMod5、CoTea4を選抜し、その機能解析を行った。comod5破壊株は野生株と比較して菌糸生育にやや遅延が認められたものの、感染器官形成や病原性に異常は認められなかった。一方、cotea4破壊株は人工基質上で侵入器官である付着器を形成した後、菌糸を下方ではなく、側方に伸ばすcokel2破壊株に特徴的な形態異常を示した。このことから、CoTea4がCoKel2と協調して本菌の感染器官分化を制御している可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、酵母のTwo-hybrid系を利用した新規相互作用因子の選抜を試みてうまくいかなかったものの、本年度はゲノム情報を利用した逆遺伝学的アプローチを優先的に進めた結果、既知の足場タンパク質CoKel2、CoBem1と相互作用する細胞極性制御因子の有力な候補の選抜に成功した。また酵母のTwo-hybrid系の代替法として、プルダウンアッセイ系を利用した実験系の確立を進め、その準備がおおむね整っている状況。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム情報から既存の2つの足場タンパク質CoKel2、CoBem1との相互作用が予想される因子を複数選抜し、その変異株の性状解析を行ったところ、当該足場タンパク質との関連を示唆するような表現型の類似性がいくつか認められた。今後は、BiFC系とプルダウンアッセイ系を利用して両者の直接的な相互作用を明らかにする予定。また同時にプルダウンアッセイ系の応用により、CoKel2と相互作用する新規のタンパク質を探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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