ウリ類炭疽病菌の宿主植物への感染には感染器官の分化が必須である。これまでに、活性酸素生成や細胞極性の制御に関わる2種の足場タンパク質CoBem1、CoKel2が本菌の感染器官分化に重要な働きをすることがわかってきた。今年度は、その中でCoKel2と直接的な相互作用が期待される因子としてCoTea4に着目し、その詳細な解析を行った。 cotea4特異的遺伝子破壊株およびcotea4::cokel2二重破壊株を作出し、そのセルロース人工基質上およびベンサミアナタバコ上における感染器官観察、キュウリ葉への接種試験を行った。その結果、cotea4破壊株は人工基質上で侵入菌糸を形成せず、側部発芽する異常付着器を形成することがわかった。一方、宿主植物表皮上では正常な付着器を形成し、接種試験により病斑形成も認められた。これらの性状はcokel2破壊株と酷似していた。また、二重破壊株の性状についても調べたところ、cotea4およびcokel2単独破壊株との顕著な差は認められなかった。 次にCoTea4-RFP融合タンパク質発現株およびCoTea4-RFP融合タンパク質・CoKel2-GFP融合タンパク質共発現株を作出し、蛍光顕微鏡観察により融合タンパク質の局在解析を行った。その結果、野生株においてCoTea4-RFP融合タンパク質の蛍光は極性成長部位である発芽管および栄養菌糸の先端を覆うように局在し、CoKel2-GFP融合タンパク質のそれと一致した。微小管阻害剤ベノミル処理によりその局在は失われ、細胞質に散在することがわかった。また、cokel2破壊株においても同様に、極性成長端を覆うような局在は認められなかった。 以上より、CoTea4がCoKel2を介した付着器形成制御機構に関与すること、またCoKel2および微小管依存的に極性成長端に局在することがわかった。
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