研究課題/領域番号 |
23780046
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
飯田 祐一郎 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜茶業研究所・野菜病害虫・品質研究領域, 研究員 (00456609)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | エフェクター / 一塩基多型解析 / 寄生性 / トマト葉かび病 / 国際研究者交流(オランダ) |
研究概要 |
先に日本で分離されたトマト葉かび病菌が、海外での発生報告がない宿主に対する特徴的な寄生性を示すことを明らかにした。これら特徴的な123菌株について寄生性を決定する4つのエフェクター遺伝子の塩基配列を全て決定し、ドラフトゲノムが決定されている標準菌株(未公開)と、既に解析済みの日本以外で分離された菌株の配列情報と比較し、一塩基多型解析を行った。その結果、日本分離菌株のそれぞれのエフェクター遺伝子には塩基配列の欠失や塩基置換、あるいは遺伝子全体の欠失など多数の変異が蓄積していることが明らかになり、これまでに海外分離菌株には認められなかった新たな変異部位が多数見いだされた。そのため、多様なレースは海外から持ち込まれたものではなく、国内のトマト栽培施設において多くの変異が生じたことで独自の寄生性分化を遂げ、日本特有のレースが生じたものと考えられた。 また同じレースでも菌株によって変異様式が異なることが明らかになり、新レースは各地域においてそれぞれに発生したと推察された。このように日本分離菌株において新たな変異部位が多数見いだされたにも関わらず、その変異パターンは海外分離菌株と同様に(1)AVR2のフレームシフト変異、(2)AVR2へのレトロトランスポゾンの挿入、(3)AVR4とAVR4Eの点突然変異、(4)AVR4EとAVR9の遺伝子の欠失、の4つであることが明らかになった。なぜたった4パターンに集約されるのか定かではないが、AVR遺伝子の本来の機能による可能性とゲノム上の位置に関係すると推測している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、近年トマト生産現場で被害が拡大しているトマト葉かび病菌において、これまでに同定されていない寄生性を決定するエフェクター遺伝子の探索である。本菌のエフェクター探索は20年以上前から行われているにもかかわらず、未同定の重要なエフェクター因子が少なくとも6つあることが分かっており、探索に用いられてきた菌株とは異なった遺伝的に特徴的な菌株を見いだす必要がある。 日本で分離されたトマト葉かび病は前例のない寄生性系統であるだけでなく、今年度の成果から遺伝的に特徴的な菌株をいくつか見いだした。現在のところ当初の計画どおりであり、次年度にはこれら菌株からトマト宿主内に分泌されるタンパク質を同定し、新規エフェクターの候補を挙げることを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおりの研究を行うが、現時点で得られたいくつかのエフェクター候補についてトマトに対する抵抗性だけでなく、その他の植物種に対する広範な作用についても研究を進展させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり使用する。次年度使用額6,166円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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