研究課題
海外での発生報告がないレースを含む日本国内で分離されたトマト葉かび病123菌株について、レースを決定するエフェクター遺伝子の変異様式を比較するため、Avr2、Avr4、Avr4E、Avr9の遺伝子配列を決定し、一塩基多型解析を行った。その結果、海外分離菌株にはない変異様式が多数みいだされ、本病原菌の多様なレースは海外から侵入したのではなく、国内で独自の寄生性分化を遂げ、日本特有のレースが生じたものと考えられた。また、同じレースでも菌株によって変異様式が異なることが明らかとなり、新レースは各地域においてそれぞれに発生したことが推察された。解析した4つのAvr遺伝子は、対応する抵抗性遺伝子Cf-2、Cf-4、Cf-4E、Cf-9をもつトマト品種にそれぞれ抵抗性を誘導する。しかしながら、既に同定されている抵抗性遺伝子に対応するいくつかのエフェクター遺伝子は未だ同定されていない。そこで新規エフェクター遺伝子の単離を目指し、感染葉のアポプラスト液におけるプロテオーム解析を行った。一方、Wageningen大学の共同研究グループでは、RNAseqによる大規模な発現解析によりエフェクター候補を選抜した。これら候補タンパク質の中から、抵抗性遺伝子Cf-5をもつトマト品種への抵抗性反応により、Avr5遺伝子が同定された。本遺伝子と相同性を示す遺伝子はDNAデータベース上に存在せず、現在のところトマト葉かび病菌に特徴的である。パルスフィールド電気泳動によりトマト葉かび病菌の染色体を分離し、Avr5遺伝子が座上する染色体を解析したところ、二次代謝産物の生合成遺伝子群を含む1.8Mbの小型染色体であることが明らかとなった。近年、病原糸状菌において多くの病原性関連遺伝子が小型染色体に座上することが明らかにされており、トマト葉かび病菌の病原性においても小型染色体が重要な役割をもつことが示唆された。
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関東東山病害虫研究会報
巻: 59 ページ: 51-52