研究課題/領域番号 |
23780047
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
高橋 章 独立行政法人農業生物資源研究所, 耐病性作物研究開発ユニット, 主任研究員 (20414914)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | イネ / 分子遺伝学 / 耐病性 |
研究概要 |
病害抵抗性の発動時におけるOsPti1aを含む膜複合体の動態について解析した結果、エリシター処理10分~180分後では、OsPti1a複合体の分子量に変化はみられなかった。ospti1a変異体では、エリシター処理30~60分後に、野生型と比較して初期応答で変化がみられる(未発表データ)。そのため、エリシター処理180分後までOsPti1a複合体の分子量が変わらなかったことは、OsPti1aの機能は複合体への可逆的な結合による制御ではなく、複合体内での相互作用による制御である可能性が考えられた。 単離したOsPti1a複合体の構成候補因子であるOsa7が、エリシター処理による培地のアルカリ化に関与するか、osa7変異体の培養細胞を作成し解析を行った。osa7変異体では、エリシター未処理時の培地のpHが野生型に比べ高い傾向が観察され、このことはOsa7の機能欠損によりH+の細胞外への排出効率が低下しているためと考えられた。一方、エリシター処理による培地のアルカリ化は、osa7変異体でも同様に観察された。しかしながら、エリシターに対する感受性は、osa7変異体で高くなっている傾向が観察され、Osa7がエリシター応答における初期応答に関与している可能性が強く示唆された。 相補試験ならびに過剰発現体の獲得のため、Osa7の形質転換体の作成を進めた。トウモロコシUBQプロモーターにつないだOsa7遺伝子のコンストラクトを作成し、osa7ホモ変異体および日本晴、またospti1a変異体に形質転換し、T0個体を得た。現在その表現型について解析を進めている。 Osa7以外のOsPti1a複合体候補因子を同定するため、さらに単離されている複合体候補因子10個について、Yeast two hybrid法によりOsPti1aと相互作用する因子を探索したが、直接相互作用するものは得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OsPti1a複合体の病害抵抗性発動時における動態が明らかになった。また、OsPti1a複合体構成候補因子であるOsa7はエリシターに対するに初期応答に関与している可能性が示唆された。次年度は、本年度作成を進めたOsa7の形質転換体を使用することが出来るため、Osa7の過剰発現による病害抵抗性への影響、ならびにOsPti1aとの相互作用について詳細な解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
本年度予定していたosa7変異体を用いた接種試験は、osa7ホモ変異体の生育が著しく悪く検定に使用できないことが判明した。そのため、病害抵抗性におけるOsa7の機能解析は、培養細胞を用いた生理学的解析、ならびに本年度作成したOsa7過剰発現体を利用した接種試験を中心に進めることにした。さらに、Osa7を過剰発現させたospti1a変異体の解析も進め、Osa7とOsPti1aの遺伝的相互作用について解析を進める。Osa7の過剰発現体で明瞭な表現型が得られた場合、マイクロアレイ解析等を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度、形質転換体の作成・維持のため研究支援者1名の雇用を予定していたが、形質転換体の作成開始が遅れたため、支援者の雇用を見送り自ら行った。そのため、謝金として計上した800,000円を次年度の消耗品として使用する予定である。また、本年度osa7変異体を用いたマイクロアレイ解析を計画していたが、osa7変異体の生育が著しく悪く、野生型との比較が困難であることから解析効率が悪いと判断し、次年度Osa7過剰発現体が得られた後に、同時に行うことにした。そのため物品費に47,636円の残額が生じたが、次年度の解析に使用する。
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