研究概要 |
昆虫の脱皮・変態を制御する脱皮ホルモンと幼若ホルモン (JH) は、胚発生においても重要な役割を果たすと考えられているが、その詳細は不明である。本研究では、昆虫の胚発生におけるホルモンの濃度変動・役割・およびシグナル伝達経路の解明を目的とし、モデル昆虫の一つである甲虫コクヌストモドキを用いて実験を進めた。平成24年度の主要な研究成果は以下の通りである。 【胚期における転写因子の発現解析】 幼虫期や蛹期にホルモン誘導性転写因子として知られている遺伝子群の発現変動を、定量PCRで詳細に調査した。その結果、4日間の胚期のうち、①3日目前半にピークのあるもの(Kr-h1, E75C)、②3日目後半から4日目前半にピークのあるもの(E75A, E75B, E75E, HR3, HR4)、③ふ化直前の4日目にピークのあるもの(Ftz-F1)、④恒常的に発現しているもの(E75D)、の4通りに分類できた。 【胚期の器官形成におけるJHの役割に関する解析】 コクヌストモドキ胚期において、JH受容体遺伝子Methoprene-tolerant (Met) をRNAi法によりノックダウンすると、大半の個体が致死となることを前年度の研究で明らかにした。本年度はこのMetノックダウン胚における転写因子の発現量を調査したところ、JHの初期応答遺伝子であるKr-h1の発現が通常個体よりも減少していることが明らかになった。したがって胚発生においても後胚発生と同様に、MetとKr-h1を介するシグナル伝達が働くことが示唆された。
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