石垣島内におけるスクミリンゴガイとラプラタリンゴガイの分布地域の変遷を明らかにするため、島内の各水系(合計4地域)から採集したPomaceaの種をミトコンドリアDNACOI領域の塩基配列情報に基づいて判別した結果、一部の地域では昨年よりもスクミリンゴガイの比率が有意に高かった。ただし、全調査期間(2007~2013年)を通して一定の傾向は見られなかった。両種間には遺伝的交流があることから、2013年度に採集した個体については、核DNAEF1α領域の塩基配列も解析し、各地域での交雑状況も調査した。その結果、4地域すべてから両種の交雑個体が確認され、石垣島のように両種が同一水田地域内に生息している場合には、両種の交雑個体が発生しうることが明らかとなった。 昨年度確認された、スクミリンゴガイとラプラタリンゴガイの交雑系統(F1)とスクミリンゴガイの交配によって得られた戻し交配系統(BC1)における耐寒性について、さらに詳細な解析を加えた結果、耐寒性の強度は祖母の種(F1作成時に使用した母親の種)によって有意に異なり、祖母がスクミリンゴガイである場合のほうが、祖母がラプラタリンゴガイである場合よりも強い耐寒性を有することが明らかとなった。 九州以北におけるPomacea属の分布実態と耐寒性の関連を明らかにするため、気象庁発行の「メッシュ気候値2000」を活用して、各地の冬期の低温積算温量(10℃以下の気温の積算値)と実際に分布状況を比較した。その結果、積雪の影響がある日本海沿岸部以外の地域では、冬期の低温積算温量が概ね700日度以上の地域ではPomacea属(スクミリンゴガイおよび交雑種)は越冬できないと考えられた。
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