研究課題
ネムリユスリカの極限的な乾燥耐性能力(アンヒドロビオシス)の分子機構を解明するために、25年度はネムリユスリカ幼虫の乾燥過程と蘇生過程における細胞周期を検出し、マイクロアレイにより蘇生過程における遺伝子発現の解析を継続した。一方、遺伝子機能解析ツールの開発を進め、RNAiと遺伝子導入法を改良した。酸化ストレス応答メカニズムを中心に解析を行った。まずは、アンヒドロビオシスにおける細胞周期がシンクロサイズするか否かを確認するために免疫染色により細胞分裂のマーカーであるリン酸化ヒストンpH3を検出した。中腸とマルピギ管では細胞分裂が常に検出された。一方、蘇生一時間後に特異的なシグナルが脂肪体の核の中に検出された。乾燥幼虫の蘇生過程における遺伝子発現のマイクロアレイ解析を詳細に継続した。代謝回復を指標する遺伝子と共に様々な修復機構(筋肉、クチクラ、DNAや細胞膜)に関わる遺伝子が誘導されていることを確認した。また、蘇生過程ではポリアミンが重要な役割を果たしていることが示唆された。遺伝子機能解析に関しては、酸化ストレス応答機構の中心に働く転写因子Cnc-Cを標的にしてRNAi実験を継続した。ネムリユスリカの培養細胞Pv11でもPv210株と同様にCnc-Cの遺伝子発現量を80%抑制することができ、そのRNAi効果が一周間も維持できることも確認した。以前の結果と同じく、Cnc-Cが基礎代謝の遺伝子発現を抑制し、乾燥耐性関連の遺伝子発現を誘導していることも確認した。最後に遺伝子のKnock-in技術を開発するために、ネムリユスリカ由来のGAPDHプロモーターを含んだベクターをネムリユスリカ幼虫に注入し、蛍光タンパク質GFPの過剰発現を誘導することに成功した。この技術は今後の解析に役立つと期待している。
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