研究課題/領域番号 |
23780056
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
陰山 大輔 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫微生物機能研究ユニット, 主任研究員 (60401212)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 共生細菌 / カイコ / ショウジョウバエ / 性決定 |
研究概要 |
カイコ培養細胞では、宿主を性転換させる能力があるボルバキアが感染することによって性決定遺伝子doublesex (dsx)の発現パターンがオス型からメス型に変化することがわかっている。そこで、ボルバキアの接種から感染増殖期におけるdsxの発現パターン変化の追跡とそれにともなう他の遺伝子の発現変化の解析を目的として、オス由来のカイコ培養細胞にメス化ボルバキアを感染させ、時間を追って細胞の状態とボルバキアの感染状態を確認した。dsx遺伝子は2週間から3週間にかけてオス型のみからオスメス両方のスプライシングパターンを示すようになることを明確に示すことができた。非感染細胞を追加せずに1か月以上経代すると細胞の損傷が大きくなることがわかったので、マイクロアレイに用いるサンプル採取は接種後、1週間、2週間、2週間とする。現在、マイクロアレイに用いるサンプル採取のための条件検討に入っている。また、キイロショウジョウバエの培養細胞(S2細胞)にボルバキアを感染させることを試みたところ、従来の方法では感染しなかったので、ショウジョウバエ用の培地であるSchneider培地をSf-900II培地に変更することや、S2細胞を感染したメス由来のカイコ細胞(aff3)と共存させた後、細胞摩砕物を5.0μmフィルターに通したものをS2細胞に再接種することによって、S2細胞にボルバキアを感染させることに成功した。今後、ショウジョウバエの性決定関連遺伝子の発現パターンがボルバキア感染によって変化しているのかどうかを調べる予定である。また、台湾の研究者から入手したキチョウの卵由来の培養細胞について、dsxの発現パターンを調査したところ、雌雄両方のdsx発現パターンが認められ、雌雄の細胞が混在していると考えられた。この細胞株については、細胞のクローニング(単細胞からの系統化)が必要と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カイコ培養細胞を用いたdsx遺伝子の発現パターン解析については予定通りほぼ終了し、3週間程度かけてゆっくりとスプライシングパターンが変化していくことが明らかとなった。あとはサンプル調製の条件検討が終わりしだい、マイクロアレイ解析に進める。また、当初困難だとされていたキイロショウジョウバエ細胞へのボルバキア感染も紆余曲折はあったものの、結果的にはうまくいった。感染はキイロショウジョウバエの培養細胞内で安定的に維持されているため、キイロショウジョウバエを用いた性転換メカニズム解析への可能性が開けた。今後は、カイコ細胞とキイロショウジョウバエ細胞との比較を行いながら研究を進めることができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
現在おこなっているサンプル調製の条件検討が終わりしだい、マイクロアレイを実施し、データ解析をおこなう。マイクロアレイ解析の結果が得られたら、候補遺伝子に対する個別の発現解析をおこなう。また、キイロショウジョウバエの細胞については、性決定関連遺伝子の発現解析に進む予定である。キイロショウジョウバエの細胞でdsx遺伝子の発現パターンが変化していることがわかったら、上流の遺伝子を1つずつ解析していき、ボルバキアがキイロショウジョウバエの性決定カスケードのどの部分に作用して性転換を起こさせているのかを明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究補助員1名の雇用と試薬消耗品の購入などに用いる予定である。
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