研究課題/領域番号 |
23780058
|
研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
二橋 亮 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究員 (50549889)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | トンボ / 体色変化 / 体色多型 / 色素 / 構造色 |
研究概要 |
トンボは主に視覚でお互いを認識するため、翅色や体色に著しい多様性が見られる。トンボの成虫における色彩変化や色彩多型については、生態学的、行動学的な視点から多くの研究が行われてきたが、具体的な色素や体色に関わる分子機構については、全く不明であった。平成23年度は、トンボの体色に関わる色素の同定、および構造色を生み出す微細構造の観察を主に行った。その結果、アキアカネやショウジョウトンボなど赤くなる種ではキサントマチンと脱炭酸型キサントマチンの2種類が主な色素であり、これら2種の色素の組み合わせが種間の色の違いと関連していることが確認された。赤い体色は雌雄やステージ間で異なるが、酸化還元電流の測定から、その違いは酸化還元状態の違いを反映しており、成熟♂のみ還元型が顕著に高いことが明らかになった。この結果は、動物の体色変化に関わるメカニズムとして過去に例のないものである。また、白~水色のシオカラトンボでは、♂が成熟するとWax状の物質を大量に分泌し、その微細構造に基づく構造色であることが確認された。さらに、♂♀で輝き方の異なるチョウトンボでは、透過型電子顕微鏡観察の結果、雌雄で多層膜干渉が異なっているためであることが明らかになった。一方で、カワトンボ属などで見られる橙色の翅色はメラニン系色素であることが示唆されたが、これらの種では翅色に加えて行動や免疫力にも違いがあることから、メラニン合成に関わる遺伝子が多面的に影響を及ぼす興味深い例であると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は体色変化、体色多型を調べる手掛かりとなる色素の同定や構造色の仕組みを幅広く明らかにすることができた。当初は震災の影響で、多くの機械が使用できなかったが、基礎生物学研究所との共同研究により、この問題を克服することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度の結果をふまえて、今年度は黄色などまだ明らかになっていない色素の同定をめざすとともに、体色多様性に関わる具体的な遺伝子の同定を目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に購入予定でったインキュベーターが、震災とそれに伴う節電対策の影響で購入できなかったため、その分の経費が約35万円繰り越しになった。平成24年度は当初の申請書の研究計画に比べ実際の交付額が45万円少ないため、当初の研究計画にあったように平成24年度に中心的に行う遺伝子解析用の費用に充てる予定である。
|