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2011 年度 実施状況報告書

植物ホウ酸トランスポーターの構造解析

研究課題

研究課題/領域番号 23780060
研究機関東京大学

研究代表者

笠井 光治  東京大学, 農学生命科学研究科, その他 (80517938)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワードホウ酸トランスポーターBOR / 結晶構造解析
研究概要

これまでにシロイヌナズナのホウ酸トランスポーターの一つであるBOR4と界面活性剤ドデシルマルトシド(DDM)の複合体BOR4-DDMの単分散性が高いことを見いだしており、本年度はBOR4-DDMの結晶化を中心に研究を進めた。BOR4の発現は出芽酵母を用いて行ったが、これまでの培養法では発現量が安定せず、精製タンパク質の収量および純度が一定しなかったため、培養条件と精製法の再検討を行った。フラスコあたりの培養液量を減らし、培養時間を調節することで比較的安定した発現量を得られるようになった。His-tag融合BOR4タンパク質のコバルトレジンによる精製において、洗浄条件を緩やかにし、Superdex200カラムを用いたゲル濾過精製ステップを加えることで収量の改善に成功した。具体的には、約0.4 mg BOR4/ 12L培養液から約0.7 mg BOR4/ 18L培養液に改善した。 CPMアッセイ法によるBOR4-DDMの熱安定性を向上させる条件の探索を行った。アニオン交換体の輸送阻害剤であるDIDSで処理することによりBOR4-DDMの熱安定性が大幅に向上すること明らかになった。また、輸送基質であるホウ酸によっても、BOR4-DDMの熱安定性が向上した。ホウ素の添加濃度を0.1~10 mMと変化させた場合、熱変性パターンが異なり、ホウ素濃度によりBOR4のコンフォメーションが異なる可能性が示唆された。 シロイヌナズナBOR4以外の結晶化候補BORを探索するために、コムギBORであるTaBOR1.1、TaBOR1.2、TaBOR1.3、TmBOR4.5(未発表)の発現系を構築した。このうち、TmBOR4.5発現量が高く細胞膜への局在性が強く、新たな結晶化候補となる可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度の研究実施計画として、1. CPMアッセイによるBOR4-DDMの熱安定性が向上する条件の検索、2. 新たな結晶化候補BORの探索、3. 結晶化スクリーニングとX線解析の3つを設定していた。1の課題に関しては、DIDSおよびホウ酸の添加がBOR4-DDMの熱安定性を向上させることを見いだすことに成功し、さらに、ホウ素の添加量を変えることにより様々なコンフォメーションをもつBOR4の結晶が得られる可能性が示され、一定の成果が得られたと考えている。しかしながら、2の課題に関しては、コムギBORの一つであるTmBOR4.5新たな結晶化候補BORとして挙げることができたが、FSEC法による界面活性剤のスクリーニングが完了しなかった。また、3に関しては、大きな課題であった精製タンパク質の収量の改善を図ることができ、結晶化スクリーニングを行うために必要なタンパク量が得られるようになったが、いまだに結晶を得る条件が見いだすことができておらず、X線回析実験を行う段階に到達できていない。

今後の研究の推進方策

DIDSおよびホウ酸の添加により熱安定性が向上したBOR4-DDMを用いて結晶化スクリーニングを進める。いまだ結晶が得られていないため、これまでに使用しているMolecular Dimensions社のMemGold kit以外の条件や、新たな方法として、近年膜タンパク質の結晶化で効果をあげているLipidic cubic phase法によるスクリーニングも行う。コムギBORについて、FSEC法による界面活性剤のスクリーニングを行い、CPMアッセイ法によりDIDSとホウ酸がシロイヌナズナBOR4同様に熱安定性向上効果を示すかどうかを確認し、結晶化スクリーニングを進める。また、シロイヌナズナBOR4の立体構造を認識するモノクローナル抗体の作製も試みる。結晶が得られ次第、X線回析実験を行い、より分解能の高い回析結果が得られる良質な結晶を絞り込む。放射光を用いたタンパク質X線結晶構造解析を行い、BORの構造を決定し、ホウ素輸送機構のモデルを構築する。

次年度の研究費の使用計画

消耗品費として、BORタンパク質精製を行うために、酵母培養試薬に約15万円、界面活性剤に約20万円を使用する。結晶化スクリーニング用の試薬に約25万円、プラスチック器具に約10万円を使用する。国内旅費として、他施設での実験に約10万円、学会発表約10万円使用する。外国旅費として、他施設での実験に約40万円使用する。その他、論文投稿、英文校閲に約20万円使用する。以上、計約150万円を使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] VvBOR1, the grapevine ortholog of AtBOR1 encodes a efflux borate transporter and is differentially expressed in reproductive tissues from Vitis vinifera2012

    • 著者名/発表者名
      Ramon Perez-Castro, Koji Kasai, Felipe Gainza-Cortes, Simon Ruiz-Lara, Jose A. Casaretto, Hugo Pena-Cortes, Jaime Tapia, Toru Fujiwara, Enrique Gonzalez
    • 雑誌名

      Plant Cell Physiol.

      巻: 53 ページ: 485-494

    • DOI

      10.1093/pcp/pcs001

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Polar localization and endocytic degradation of a boron transporter, BOR1, is dependent on specific tyrosine residues2012

    • 著者名/発表者名
      Akira Yoshinari, Koji Kasai, Toru Fujiwara, Satoshi Naito, Junpei Takano
    • 雑誌名

      Plant Signal. Behav.

      巻: 7 ページ: 64-69

    • DOI

      10.4161/psb.7.1.18527

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Low-affinity cation transporter (OsLCT1) regulates cadmium transport into rice grains2011

    • 著者名/発表者名
      Shimpei Uraguchi, Takehiro Kamiya, Takuya Sakamoto, Koji Kasai, Yutaka Sato, Yoshiaki Nagamura, Akiko Yoshida, Junko Kyozuka, Satoru Ishikawa, Toru Fujiwara
    • 雑誌名

      Proc. Natl. Acad. Sci. U S A.

      巻: 109 ページ: 20959-20964

    • DOI

      10.1073/pnas.1116531109

    • 査読あり
  • [学会発表] ホウ酸トランスポーターBOR1の極性欠損変異体の解析2012

    • 著者名/発表者名
      笠井光治、高野順平、藤原徹
    • 学会等名
      第53回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      京都産業大学(京都府)
    • 年月日
      2012年3月16日
  • [学会発表] シロイヌナズナホウ酸トランスポーターBOR1の細胞内偏在機構の解析2011

    • 著者名/発表者名
      笠井光治、高野順平、藤原徹
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会2011年度つくば大会
    • 発表場所
      つくば国際会議場(茨城県)
    • 年月日
      2011年8月9日

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公開日: 2013-07-10  

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