Azorhizobium caulinodansはマメ科植物セスバニアと共生する根粒菌であり、非マメ科植物の組織内に定着する内生窒素固定細菌でもある。A. caulinodansは、ある程度酸素が存在する条件下でも窒素固定を行うことが可能であり、これは、非マメ科植物内で窒素固定を行う上での重要な特性の一つである。本研究では、A. caulinodansが如何にして酸素を克服しているのかという点に着目し、「新規内膜タンパク質(OcmAと暫定的に命名)が細胞内の酸素濃度を低下させる機構を担っている」という仮説を提起し、それを証明することを当初の目的としていた。 研究を進める最中に、A. caulinodans のocmA遺伝子破壊株は野生型株に比べて多量の菌体外多糖を生産することが判明し、OcmAは 菌体外多糖生産に関与し、菌体外多糖のバリアで菌体内酸素濃度を制御している可能性が浮上してきた。また、Lonプロテアーゼをコ ードするlon遺伝子破壊株の菌体外多糖生産能が野生型株に比べて劣ることが判明し、lon遺伝子が細胞内酸素濃度低下機構を担う可能性がある遺伝子として候補に挙がった。 A. caulinodanslonにおけるlon遺伝子の機能解析を進めていった結果、lon遺伝子は菌体凝集にも関与している可能性が判明し、菌体凝集により細胞内酸素濃度の低下が制御されている可能性も見いだされた。 さらに、細胞内酸素濃度とは関係ないが、lon遺伝子は宿主植物細胞に対する本菌の攻撃性に関与するreb遺伝子群の発現制御にも関わっていることも、本研究により見いだされた。
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