研究課題/領域番号 |
23780065
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邉 哲弘 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (60456902)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 土壌生成 / 吸着 / 粘土鉱物 / 施肥 |
研究概要 |
本研究は、インドネシアの畑作地として重要な位置を占めるスマトラ島、ジャワ島の火山地帯を対象として、適正な施肥技術の確立を目的として行っている。本地域では、気候および地質が、スマトラ島北部からジャワ島東部にかけて連続的に変化しており、また、各地において標高に伴い気温と降水量が異なるため、多様な土壌が分布する。 平成23年度は、スマトラ島北部からジャワ島東部にかけての広域から土壌を採取し、窒素、リン、カリウムといった肥料成分の吸着に強く影響する粘土鉱物の組成を調べた。また、各地点の土壌から土壌溶液を採取し粘土鉱物の熱力学的な安定性を調べることで、気候および地質が土壌粘土鉱物の生成に与える影響を調べた。結果として、珪長質な母材が分布し降水量の多いスマトラ北部においては、造岩鉱物の風化速度が遅く土壌溶液へのケイ酸の放出が遅いことと、降水によりケイ酸が土壌中から溶脱しやすいことにより、土壌溶液中のケイ酸濃度が低くなっており、その条件下で比較的安定なギブサイトが多く含まれていた。また母材に由来すると考えられる雲母およびバーミキュライトが随伴していた。一方で、ジャワ島中東部では、苦鉄質な母材が分布しており乾季が明瞭にある。苦鉄質な母材に含まれる鉱物の風化速度は大きくケイ酸を土壌中に速く放出することと、乾季によりケイ酸の溶脱が抑えられることから、土壌溶液中のケイ酸濃度は高く、その条件下で比較的安定なスメクタイトが生成していた。また、各地で、標高に伴い反応活性の高いアルミニウム・鉄の酸化物・水酸化物の量が増加していた。これらの粘土サイズの鉱物について、ギブサイトやアルミニウム・鉄の酸化物・水酸化物は表面の水酸基の反応を通してリンの吸着に寄与し、また、雲母、バーミキュライト、スメクタイトは陽イオン交換やアンモニア態窒素およびカリウムの固定に寄与すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、インドネシアのスマトラ島とジャワ島における粘土鉱物の広域分布とその生成条件を明確にすること、肥料成分についての吸着実験を行い各土壌の性質を明らかにすることを目的としていた。前者については、明確で非常に良い成果を得ることができた。後者についてはまだ実験を行っていないが、平成24年度以降に予定していた、肥料成分の溶脱についての実験を行う圃場の決定とその予備実験を行うことができた。以上より、本研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、窒素、リン、カリウムといった肥料成分の適正施肥を達成することを目的として行っている。本研究地域では、各地点での標高に伴う土壌の違い、すなわち肥料成分の吸着を支配する粘土鉱物の組成(鉱物性・化学性)と透水性や孔隙分布(物理性)が大きく異なる。平成24年度以降は、地域を限定して圃場からの肥料成分の溶脱について、鉱物性・化学性と物理性の両側面から、肥料成分の溶脱をコントロールする因子を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は試料採取および実験実施のための外国旅費、土壌粒子の表面状況を調べるための節備備品費(物品費)として主に使用し、他に化学薬品などの消耗品費とする。
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