研究概要 |
マメ科植物の多くは根に根粒菌が感染すると、共生窒素固定器官である根粒を形成する。成熟した根粒では、根粒菌と植物間で様々な代謝産物や無機イオンが輸送されるが、この過程に関わる輸送体の実態は解明されていない部分が多い。 今年度は、レーザーマイクロダイセクションによる根粒の各組織特異的なサンプルを用いたマイクロアレイ解析により、根粒の外側の細胞層で特異的に発現することが明らかになった、Multidrug and toxic compound extrusion (MATE) 型輸送体であるLjMATE2およびLjMATE3に着目して研究を行った。 LjMATE2およびLjMATE3の発現解析を行った結果、LjMATE2の発現はアントシアニンの蓄積した茎のみで観察された。またオウレン培養細胞にGFP融合タンパク質を一過的に発現させた結果、LjMATE2は液胞膜に局在することが明らかになった。以上より、LjMATE2は根粒ではなく、茎でのアントシアニンの液胞蓄積に関与することが示唆された。 一方でLjMATE3の発現は根粒形成初期から地下部で誘導され、根粒の成熟に伴って上昇した。Promoter:GUSを用いた解析により、LjMATE3は成熟根粒においては根粒維管束などで特異的に発現することが明らかとなった。オーキシン輸送阻害剤であるTIBA(2,3,5-triiodobenzoic acid)処理によって根粒維管束の形成を阻害したところ、根粒でのLjMATE3の発現は上昇した。さらに、LjMATE3は2-ヒドロキシイソフラバノン合成酵素やベスティトン還元酵素等のフラボノイド生合成系遺伝子と同様にGSH処理により誘導されることが明らかになった。
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