研究課題/領域番号 |
23780068
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
岡崎 伸 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40379285)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 3型分泌系 / ダイズ / 共生 / 根粒菌 / マメ科植物 / 防御応答 / シグナル伝達 / 遺伝子発現 |
研究概要 |
本研究では、根粒菌のタンパク質分泌系(3型分泌系)に着目し、特に根粒菌分泌タンパク質がマメ科植物の共生遺伝子発現をどのように活性化しているか明らかにすることを目的にしている。平成23年度は以下の研究を行った。(1)ダイズ根粒菌Bradyrhizobium elkanii USDA61株は、NFR1変異体ダイズに根粒を形成する能力をもつ。3型分泌系に変異を導入する根粒を形成できなくなることから、3型分泌タンパク質(エフェクター)が根粒形成開始のシグナル伝達を誘導する可能性がある。そこで、3型分泌系を保持するがNFR1変異体ダイズには根粒を形成できないB. japonicum USDA110株への相補試験により、エフェクター遺伝子の単離を試みた。USDA61株のゲノムライブラリをUSDA110株に導入し、 NFR1変異体ダイズへ根粒を形成するものを検索した結果、共生能力を相補するコスミド候補が複数検出された。今後コスミド領域を詳細に検討することで、根粒形成シグナル活性化エフェクター遺伝子を同定する計画である。(2)3型分泌系により宿主側に引き起こされる遺伝子発現の網羅的解析を行った。具体的には、USDA61株または3型分泌系破壊株を接種したダイズの根を回収、RNAを抽出し、マイクロアレイによる発現解析を行った。その結果、USDA61株では、ENOD40やNINなど既知の共生遺伝子が多数含まれていたが、同時に病原菌に応答する防御遺伝子や機能未知遺伝子も含まれていることが明らかとなった。以上の結果より、根粒菌3型分泌系にダイズ細胞内により注入されるエフェクターが共生シグナルだけでなく、防御応答をも惹起することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Bradyrhizobium japonicum USDA110株への異種相補によるエフェクターの検索の結果、NFR1変異体ダイズへの共生能力を相補するコスミド候補を複数検出することができた。当該コスミドにはNod factor-Nod factor受容体からなる相互認証を経由せずに根粒形成を直接活性化するエフェクター遺伝子が存在している可能性があり、今後の解析によりエフェクター遺伝子を同定し、根粒菌エフェクターが如何に宿主側共生シグナルを活性化しているか解明できる可能性がある。一方、マイクロアレイ解析の結果、根粒菌3型分泌系により既知の共生遺伝子と、病原菌に応答する防御遺伝子が発現上昇することが明らかとなった。今後詳細に解析する必要はあるが、根粒菌3型分泌系により共生シグナルが活性化されるという現象はこれまで報告されておらず、本成果の意義は大きい。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きダイズの根粒形成シグナルを活性化する根粒菌3型分泌蛋白質(エフェクター)の同定を行う。具体的には、平成23年度に得たコスミド領域を詳細に検討することで、エフェクター遺伝子の同定を試みる。エフェクターが同定できた場合は、以下の2つの実験を行う。(1)ダイズ細胞内へ輸送される分泌タンパク質の検出同定した根粒菌エフェクターが実際にダイズ細胞内へ注入されているのかを検討するため、エフェクターを蛍光や抗体で検出する系を開発する。具体的には、GFPやGSTなどの分子タグを付加したエフェクター遺伝子を作製して根粒菌に導入し、ダイズに接種して、エフェクターの組織・細胞内局在に関する情報を得る。また、エフェクターを認識するポリクローナル抗体作製のため、大腸菌内での発現系を構築する。(2)Pull down assayによる根粒菌エフェクターと相互作用するダイズ蛋白質の検索 根粒菌エフェクターが、宿主ダイズ側のどのような蛋白質と結合するかをPull down assayにより検索する。実験1.で大腸菌内で発現させた分子タグ融合エフェクターをNFR1変異体ダイズの根細胞抽出液と混合してインキュベートし、相互作用する(結合する)蛋白質との複合体を単離する。この複合体をSDS-PAGEで分離したのち、ファーウェスタンブロッティングによって結合の再確認を行う。二次元電気泳動により複合体を分離した後、質量分析によりアミノ酸配列の決定を行い、データベースに照会して遺伝子の同定を目指す。以上の実験により、根粒菌エフェクターが宿主ダイズのどのタンパク質をターゲットにし、宿主側共生シグナルを活性化しているのか、その分子機構を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を遂行するため、一般試薬類、遺伝子工学試薬類、免疫・蛍光試薬類、プラスチック器具類、ガラス器具類などの購入費用として研究費を使用する計画である。
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