研究課題/領域番号 |
23780071
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
上野 大勢 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (90581299)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | イネ / 亜鉛 / トランスポーター |
研究概要 |
本研究の目的は、人間に不足しがちなミネラル・亜鉛を、主要穀物であるコメにおいて強化するために、イネの亜鉛輸送の分子機構を解明することである。コメに通じる篩管に転流されるミネラルの大部分は登熟期に導管により地上部の節へ送られてきた物に絞られる。そこで本研究では、まずイネの根において導管への亜鉛のローディングに関与する遺伝子の探索を試みた。レーザーマイクロダイセクションとマイクロアレイによる組織別遺伝子発現データベースを利用し、根の中心柱で高発現する複数の輸送体遺伝子から、Zn/Fe-CDF輸送体をコードするOsMTP7を候補として選抜し解析を行った。リアルタイムRT-PCRによって地上部と根のmRNAレベルを比較したところ、OsMTP7は根で地上部の3倍高発現していた。また、地上部、根ともに亜鉛過剰、欠乏処理による発現への影響は見られなかった。プロモーター領域にT-DNAが挿入され、発現が10倍高まったタグラインを取得し、異なる濃度の亜鉛、鉄濃度で2週間処理したところ、T-DNA挿入株の地上部において鉄の濃度が約30%低下したが、亜鉛濃度に有意差は見られなかった。また、根の亜鉛と鉄の濃度、地上部と根の生育に対するOsMTP7高発現の影響は見られなかった。タマネギ表皮細胞におけるGFP融合タンパク質の局在を解析したところ、細胞膜と小胞への局在が見られた。酵母発現系において相補性試験を行ったが、GAL1プロモーター制御下ではOsMTP7の発現自体が著しく生育を抑制したため、輸送基質の同定には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
遅れが生じている最大の要因は候補遺伝子として解析に着手していたOsMTP1およびOsHMA2に関する論文が当該年度に報告されてしまい、解析対象の変更を余儀なくされた事にある。また、cDNAライブラリーによる候補遺伝子のスクリーニングが成功しなかった点も要因の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
現在までのところ、T-DNAラインを用いた生理学的解析では明瞭な表現型を示せていない。そのため、次年度は処理条件の検討を行うとともに、新たに作成中のRNAiによる発現抑制株と、ユビキチンプロモーターによる過剰発現株を用いて植物体内におけるOsMTP7の機能解析を行う。また、それぞれの組換え体を用いて、前年度に間に合わなかった土耕栽培を行い、種子中の亜鉛集積を調べる。 酵母発現系における多コピーあるいはGAL1プロモーター制御の過剰発現によると考えられる毒性の問題を回避するために、GAPDHプロモーター制御によるインテグレーションベクターに切り替えて検討する。局在性の解析では、融合タンパク質間にリンカー配列を設ける事や、現在作成中のanti-OsMTP7ポリクローナル抗体を用いたウエスタン解析によって推進する予定である。 さらに、Zn-CDまたはZn/Fe-CDFファミリーに属する全5種類の輸送体のうち、機能が報告されているものは1種類に留まるため、OsMTP7以外の残りの3種類に関してもクローニングし、亜鉛輸送における役割を明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の計画に基づく経費執行について、4月に支払いすべき経費がのこっているため、次年度使用学が存在するように見えるが、実際には、全額を執行予定である。そのため、次年度の研究は、当初の計画通り進める予定である。
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