研究課題/領域番号 |
23780074
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 肇 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50549269)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バイオガス / メタン / 水素 / メタン菌 |
研究概要 |
バイオカソードにおけるエネルギー資源ガス(水素とメタン)生産の微生物的背景を理解し、バイオカソードで水素とメタンの生成反応をそれぞれ触媒する機能性微生物系を特定するために、以下の実験を行った。まず、電解培養セル(金属触媒非添加)で、バイオカソードを作製、解析対象とした。微生物源として常温性微生物群(消化汚泥由来)と高温性微生物群(地下水由来)の二つをそれぞれ電解培養リアクターセルに植菌し、電圧印可培養を行った。リアクターセルで発生した電流とガス生産を定期的に観測したところ、常温性消化汚泥を微生物源とするリアクターセルでは培養開始後初期には水素が、それ以降はメタンが生成し、その生成量は発生した電流の量に対応していた。また高温性消化汚泥を微生物源とするリアクターセルでは電流量に対応したメタンの発生が観察された。2種類のリアクター共、電流(電子)のバイオガスへの変換効率はほぼ100%であり、高機能のバイオカソードが形成されていることが示唆された。そこで活発にメタンを生成している両バイオカソードからそれぞれDNAを抽出、16S rRNA遺伝子を指標に微生物叢の群集構造を分子系統学的手法で解析した。その結果、両方のバイオカソード上で、電気化学的活性の高い細菌種と水素資化性メタン生成古細菌の優占化が示唆された。この結果から、バイオカソードのおけるガス生産反応では、電気化学的活性の高い細菌種がカソードからの電子の受容を仲介している事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の結果から、バイオカソードのおけるガス生産反応は、電気化学的活性の高い細菌種がカソードからの電子の受容を仲介している事が示唆された。この知見は、既知の電気化学的活性の高い細菌種の純粋培養株とメタン菌の共培養系を用いて、比較的簡易にバイオカソードが構築出来る可能性を示している。これは次年度以降の研究において、(研究立案時に想定していたよりも)スマートな研究モデルを提供するものとして、今年度の目標を達成するものである。さらに、平成23年度の研究の副産物的な成果として、これまで知られていなかった電気化学的活性の高い細菌種を発見している。
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今後の研究の推進方策 |
「機能性微生物系の選択的増幅による次世代バイオカソードの構築」まず、「水素とメタンのみをそれぞれ安定して生産する2種類の次世代バイオカソードの並行構築」を行う。これは、平成23年度に得られた知見を基に、微生物株の共培養系を利用することで、より確実に達成できると考えられる。微生物種としては、より新規性の高い知見が得られると期待される高熱性微生物種を優先して実験に供する。「2種の次世代バイオカソード反応を触媒する微生物系の遺伝子発現の網羅的解析」得られた2種(水素生産型とメタン生産型)の次世代バイオカソード上の微生物系の遺伝子発現を網羅的に解析し、バイオカソード上でアクティブな代謝系を遺伝子レベルで明らかにする事で「次世代バイオカソードの機能性微生物系による水素とメタン生産反応の触媒機構の解明」を達成する。活発なガス生産活性を示している次世代バイオカソード(2種類)からそれぞれRNAを採取する。採取RNAからmRNAを純化、逆転写により発現ライブラリーを作製する。Pyrosequencing法でライブラリーの塩基配列を大規模決定し、バイオカソード上での機能性微生物系の遺伝子発現を網羅的に解析、ガス生反応の触媒機構を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「6基の電解培養セル(それぞれ直流電源装置に接続)」(備品費:20万円)を用いて次世代バイオカソード2種の構築を行う。次世代バイオカソード上の微生物系から、「RNA抽出、mRNA純化、逆転写用の試薬」(消耗品:10万円)により発現遺伝子ライブラリーを構築、塩基配列を「Pyrosequencing法で決定」[受託サービス(その他):100万円]、発現遺伝子を網羅的に解析する。
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