本研究で構築した好熱性のメタン生産バイオカソードは、既往研究中で最も高いメタン生成速度を有し、反応の電子利用効率は96%以上という顕著に有望な特性を示した。そこで、同バイオカソードの電気化学的メタン生成(EM)反応の触媒機構を詳細に解析した。二槽式の電気化学的培養セルに同バイオカソードを移植し、ポテンショスタットにより定電位(-0.5 V vs. SHE)を与えて培養したところ、EM反応の触媒能が培養継続により向上した。触媒能が向上した同バイオカソードでの電気化学的反応をCyclic Voltammetryにより解析した結果、電位に依存した2種類の反応経路が存在する事が示唆された。詳細な反応実験から、-0.32から-0.6 V (vs. SHE)の電位では「直接的なEM反応(CO2 + 8H+ + 8e- → CH4 + 2H2O)」が、-0.6 V (vs. SHE)より低い電位では水素分子の生成を介した「間接的なEM反応(2H+ + 2e- → H2 およびCO2 + 4H2 → CH4 + 2H2O)」が起こっている事が示唆された。これらはバイオカソードのEM反応の電気化学的特性を明らかにした初めての知見である。
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