研究課題/領域番号 |
23780078
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
本田 孝祐 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90403162)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 合成代謝工学 / タンパク質工学 / 好熱性菌 / 耐熱性酵素 / ピルビン酸酸化 / ピルビン酸デヒドロゲナーゼ |
研究概要 |
研究代表者は、モジュール化した耐熱性酵素を任意に組み合わせ、化学品生産に特化した人工代謝経路をin vitroで再構築する「合成代謝工学」の確立を目指した研究を進めている。このうち、すでに別プロジェクトにおいて構築済みの人工解糖系の最終産物であるピルビン酸を、生体反応で様々な代謝産物への合成中間体となるアセチルCoA生産へと変換するための人工代謝経路を構築することが、本研究課題の主たる目的である。酵素モジュールとして利用可能な十分な耐熱性を有した新規ピルビン酸脱炭酸酵素(PDC)の取得と、すでに報告のある耐熱性アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼおよびアシルCoAシンテターゼとのカップリングによる合成代謝経路を構築することが具体的実施内容となっている。当該年度は、新規好熱菌の取得とPDC活性を指標としたスクリーニングを進めるとともに、各種のデータベース上の情報に基づき、既知PDCの酵素化学的諸性質を精査していった。この結果、中温菌であるAcetobacter属細菌(最適生育温度30℃)が産生するPDCが、60℃での半減期が2時間強という中温菌由来酵素としては例外的に高い耐熱性を示すものであることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
耐熱性酵素の主たる遺伝子ソースである好熱菌においてPDCの存在は未報告であった。そこで、自然界からの新規好熱菌の取得とPDC活性を指標としたスクリーニングを進めるとともに、各種のデータベース上の情報に基づき、既知PDCの酵素化学的諸性質を精査していった。この結果、中温菌であるAcetobacter属細菌(最適生育温度30℃)が産生するPDCが高い耐熱性を示すとの知見を見出した。当該微生物より目的酵素遺伝子を取得し、大腸菌内での過剰発現と組換え酵素の特性評価を行った結果、本酵素が目的の反応を触媒し、60℃での半減期が2時間強という中温菌由来酵素としては例外的に高い耐熱性を示すものであることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定ではスクリーニングにより得られた新規PDCの単離精製と対応する酵素遺伝子の同定を平成24年度以降の推進方策としていた。しかし、上述のとおり、初年度において、データベース情報に基づく解析により、すでにAcetobacter属細菌由来耐熱性PDCならびにその酵素遺伝子の取得に成功している。そこで、平成24年度は、ここからさらに歩を進め、進化工学的手法を駆使した当該酵素のさらなる耐熱化に挑戦する。以降、ここで得られた超耐熱性PDCを、耐熱性アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼおよびアシルCoAシンテターゼとカップリングすることにより、ピルビン酸からアセチルCoAへの人工代謝経路を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
耐熱性PDCの取得に向け、自然界からのスクリーニング、およびデータベース情報に基づく探索という異なる研究戦略を採用したが、結果的にデータベース情報を精査した結果に基づき、目的酵素およびその遺伝子の取得に成功した。このため、予定していた研究活動のうち、wet実験の占める割合が少なくなり、研究費に若干の繰り越しが生じた。平成24年度以降は、進化工学的手法による超耐熱性PDCの取得という新たな方策に基づく研究を実施する予定であり、DNA修飾酵素群など多数の消耗品が必要になろうが、前年度からの未使用額も含めた当初の見込み金額で十分に実施可能な範囲である。新たな研究方策の実施により、当初計画で想定していたものを大きく上回る成果が得られることが期待される。
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