昨年度の研究で発見した、RSS1ファージの完全長と思われるRSS0ファージについて、宿主への影響(病原性変化、溶原化によるimmunityの有無等)の研究を進めた。 これまで、RSS様ファージ配列が溶原化している株に、さらにRSS1ファージが感染できること(immunityが働かない)、さらにその感染により病原性が増加するメカニズムが不明であった。RSS1が溶原化している株に対し、様々なストレスを加えファージの活性化(誘発)実験を試みた。その結果、誘発を引き起こすことに成功したが、RSS1(6662 nt)と同時に626 nt長いファージRSS0(7288 nt)が出現することが明らかとなった(すなわち、溶原化RSS0ファージの宿主ゲノムからの切り出され方は2タイプある)。この延長された領域には、新たなORF(ORF13:DNA-binding transcription regulator proteinと相同性を示し、転写制御因子と予想される。156 aa。)が存在していた。 このORF13を有するRSS0ファージにはimmunityが働き、溶原化株に感染できなくなることが判明した。さらに、完全長RSS0が感染し、プラスミド状で複製している場合(完全長ORF13)は、今までとは逆に宿主の病原性を減少させること。溶原化している株(短縮型ORF13)には病原性がありRSS0に対しimmunityが働くこと等のデータが得られた。そこで、ORF13およびファージ感染、溶原化による宿主への影響を明らかにする必要が生じた。これについて、平成26年度に採択していただいた「繊維状ファージの感染ステージによる宿主の病原性変化」(若手研究(B))として研究して行く。これは繊維状ファージの転写制御因子と病原性との関係を示す最初の例になると期待される。
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