研究課題/領域番号 |
23780085
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤野 泰寛 九州大学, 基幹教育院, 助教 (70582659)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | promoter / silica / over-expression |
研究概要 |
【シリカ誘導性プロモーターの機能解析】Thermus属細菌のシリカ誘導性プロモーターはシリカ刺激に応答するとともに、培地中の鉄不足によっても転写活性が増大する。鉄濃度に依存した転写制御はFur(Ferric iron uptake regulator)が制御していることが知られているが、Thermus属細菌ゲノム上には3つのFurホモログ(TTHA0255, TTHA0344, TTHA1292)が存在していた。これらのタンパク質を大量発現させ、シリカ誘導性タンパク質上流部位をプローブとしたゲルシフトアッセイを行ったところ、TTHA0344産物に対してバンドの上昇が見られ、本遺伝子産物がリプレッサーとして機能していることが明らかとなった。現在Furの制御領域を正確に決定するため、DNA footprinting Assayを行った。本結合領域は既報の大腸菌、枯草菌などのFur認識配列とは異なっており、Thermus属細菌特有のものと推察された。また、プロモーター領域を含む様々な長さのDNA断片をGFPの上流に組み込み、これをThermus属細菌、及び大腸菌に形質転換し、蛍光強度によるプロモーター強度の測定を行っている。【シリカ結合ドメインの開発】Thermus属細菌の細胞抽出液に球状シリカを添加し、球状シリカを洗浄後、シリカに強く結合したタンパク質を見出した。本タンパク質を調製し、N末端アミノ酸配列解析を行っているが、現在のところシーケンスデータは得られていない。そこで本システムでは大腸菌由来Si-Tagを利用することとし、当該遺伝子領域を取得し、GFP下流に融合タグとして発現できるベクターを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シリカ誘導性プロモーターの制御因子の同定はほぼ順調に進行した。途中、蛍光光度計の不具合が発生し、プロモーターアッセイについては当初の予定より進行が遅れている。現在のところ、不具合は解消しており、またその間に後に構築しなければならないベクターの構築などを行ったため、研究全体の進度としては期間内に十分完了できるものと考えている。SB-Tagの解析は困難を極めているが、これは当初より予想していた結果であり、計画書にもあった通り、本システムではすでに詳細な解析が完了しているSi-Tagを利用することで遂行可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は速やかにシリカ誘導性プロモーターの活性測定を完了させる。大腸菌用、Thermus属細菌用ともにベクターの構築は完了しており、添加するシリカ濃度やシリカ源を検討しながら誘導に最適なシリカ濃度などを決定するとともに、Thermus属細菌由来の制御因子が大腸菌何でも正しく機能するかについて検討を行っていく。また、構築されたシリカ誘導性プロモーター-GFP-SiTagを有するベクターを用いて、発現~精製までのステップについて最適条件を決定する。シリカ誘導性プロモーターは鉄不足によって制御されているものと考えられるため、シリカのソースとしてはコロイドシリカや荷電した球状シリカなど、鉄イオンを吸着しやすい形態のものを中心に考え、その最適濃度や結合・洗浄のための条件に検討を加える。洗浄・結合の条件はSi-Tagに依存するものと考えられるため、既報の条件を中心に検討し、タンパク質を吸着させたシリカ粒子の分離条件(フィルターのポアサイズ、遠心の重力加速度など)を重点的に検討する。また、より使用しやすい発現システムとするため、外来タグの除去ができるようなプロテアーゼ認識配列の導入やオンカラムでの処理条件などの検討を行う。Thermus由来SB-Tagについては、今後も並行して解析を進め、Si-Tagより有用である場合にはSi-Tagとの交換を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
【消耗品費】400千円:細菌の培養に必要な培地成分類、及びシリカ源についての購入を予定している。また、ベクターの改変に必要な制限酵素類、PCRキット、変異導入キットなどの遺伝子工学キット類、チップ、遠心チューブなどのプラスチック製品、およびプライマー合成料として予算を計上している。【旅費】150千円:研究成果がまとまり次第、国内で開かれる学会(日本生物工学会)で発表を予定している。そのための予算を旅費として計上している。【その他】60千円:研究成果を発表するための論文投稿料、及び印刷費として計上している。
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