生命の体内には重金属が微量含まれており、これが生命維持活動において重要な機能を担っている。特に酸化還元反応などに従事する酵素タンパク質の活性中心などに配置され、生体内の触媒機能を生み出している。これまで、研究代表者らは化学合成微生物の生体内のタンパク質に結合する重金属の探索を行ってきた。その結果、深海熱水活動域において分離・培養された硫黄酸化化学合成独立栄養微生物の全タンパク質中に非常に多く存在していることが示された。さらにこの化学合成微生物の生育に必須であることも明らかとなった。現在までにアルミニウムと結合し機能するタンパク質は知られていない。そこで、本研究はこの硫黄酸化化学合成微生物の全タンパク質からアルミニウム結合タンパク質を微量な重金属を検出可能なICP-MSを利用して探索し、同定することを目的として行った。 本研究を実施するためには、菌体およびタンパク質を大量に回収する必要があったこと、外部から重金属のコンタミなく、ピコグラムレベルの生体内金属の検出が必要となる。昨年度までに菌体の効率の良い回収方法の構築、そしてタンパク質の抽出・生成系の構築は終了した。本年度はICP-MSによる精製系とICP-MSを組み合わせによって、生体内のタンパク質のうち、どのタンパク質がアルミニウム結合タンパク質であるかの探索を行った。現在、4種のアルミニウム結合タンパク質の候補が同定できたところであり、これらのアミノ酸配列の決定を行っているところである。最終的には、既にゲノム配列が決定している菌であることから、これらのタンパク質の機能を同定を行い、論文の準備を行うことにしている。
|