研究課題/領域番号 |
23780101
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
恩田 弥生 山形大学, 農学部, 助教 (70368463)
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キーワード | 植物 / 酵素 / 蛋白質 |
研究概要 |
プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)は蛋白質ジスルフィド結合の形成を司るスルフヒドリル酸化還元酵素である。高等植物は多くのPDIファミリーメンバーを有し、多様なジスルフィド結合形成システムを進化させてきたと考えられる。興味深いことに、イネPDIL2;3は活性部位(CGHC)依存的に小胞体(ER)内で特に蛋白質顆粒PB-Iに局在する。本年度はERにおけるイネPDIL2;3の機能をPB-Iマーカーを用いて調べた。 蛋白質顆粒は植物固有のオルガネラの一つであり、貯蔵蛋白質の大量かつ安定な蓄積を可能とする。イネ胚乳細胞では二種の蛋白質顆粒、ER由来PB-Iと蛋白質貯蔵液胞由来PB-IIが発達する。イネ貯蔵蛋白質の一つであるプロラミンは三つのコンセンサス配列、LxxC(領域A)、CCxQL(領域B)、及びPxxC(領域C)を有し、分子間ジスルフィド結合形成がプロラミンのPB-I集積に重要な役割を担う。αグロブリンはプロラミンファミリーに認められるコンセンサス配列を有する親水性貯蔵蛋白質であるが、興味深いことに、そのC末端領域欠損体(GFP-AB)はプロラミンと分子間ジスルフィド結合を形成しPB-Iに集積する。共焦点レーザー顕微鏡解析を行った結果、PDIL2;3 RNAiノックダウン細胞ではPB-IマーカーGFP-ABがERからPB-IIに輸送され、Cys/Ala置換GFP-AB変異体と同様の挙動を示した。本研究はPDIL2;3が分子間ジスルフィド結合形成を促進し蛋白質のER内、特にPB-Iへの局在化を決定する上で重要な役割を果たすことを見出し、PDIL2;3依存的電子伝達経路の機能を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は平成24年度研究実施計画に基づき、スルフヒドリル酸化還元酵素のRNAiノックダウン形質転換植物系統を作製・選抜した。貯蔵蛋白質の組成・蓄積、オルガネラへの蛋白質輸送、およびオルガネラ発達への影響を解析し、ER内での蛋白質顆粒発達におけるPDIL2;3依存的電子伝達経路の機能と役割を明らかにした。更に、複数のPDI分子種について酵素反応特性を比較解析し、PDIのin vitro機能評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究成果の一つとして、複数のPDI分子種について酵素反応特性を比較解析し、蛋白質の酸化的リフォールディング能が大きく異なることを見出した。研究実施計画及び平成24年度の研究成果に基づき、次年度は個々のスルフヒドリル酸化還元酵素分子種について蛋白質の酸化的フォールディングにおける作用機序を生化学的・分子生物学的アプローチにより解析し、ERレドックス環境制御のダイナミクスを明らかにする。本研究により植物細胞においてスルフヒドリル酸化還元酵素群を介した個々の電子伝達ルートがどのようにして特異的かつ統合的に制御されているか、蛋白質ジスルフィド結合形成のネットワークとレドックス環境制御のダイナミクスを理解することが可能となり、得られた結果を取りまとめ研究成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究実施計画及び平成24年度の研究成果に基づき、次年度はスルフヒドリル酸化還元酵素分子種について蛋白質の酸化的フォールディングにおける作用機序を生化学的・分子生物学的アプローチにより明らかにする。研究計画を遂行するため、次年度の研究費は研究試薬等物品の購入に使用する。
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