研究実施計画及び平成24年度に得られた研究成果に基づき、平成25年度は植物チオール-ジスルフィド酸化還元酵素群の酸化的蛋白質フォールディングにおける作用機序を解析した。プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)はチオール-ジスルフィド酸化還元酵素の一つであり、システイン残基ペア(CxxC)を有するチオレドキシン様活性ドメインと非活性ドメインから構成される。イネ(Oryza sativa)PDIファミリーに属するPDIL1;1、PDIL2;3、PDIL1;4は異なるマルチドメイン構造を示す分子種であり、興味深いことに異なる小胞体ストレス応答を示した。各PDI分子種の大腸菌組換え蛋白質発現系を構築し精製標品を得て、蛋白質ジスルフィド結合形成反応を比較解析した結果、PDIL1;1が最も効率よく蛋白質ジスルフィド結合の形成及び還元を促進することを見出した。イネの登熟胚乳細胞では物理化学的性質の大きく異なるジスルフィドリッチ貯蔵蛋白質群(グルテリン、αグロブリン、プロラミン)が活発に生合成される。PDIL1;1はグルテリンやαグロブリンのジスルフィド結合形成と蛋白質貯蔵液胞への輸送に必須であり、PDIL1;1依存的経路の破綻はPDIL2;3依存的経路、即ち、プロラミンの分子間ジスルフィド結合形成と小胞体由来蛋白質顆粒への集積も阻害した。これらの結果から、PDIL1;1は小胞体において高いジスルフィド結合伝達能・還元能を有し、蛋白質ジスルフィド結合形成制御ネットワークにおいて重要な役割を担うことが示唆された。
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