研究課題/領域番号 |
23780104
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
関 光 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30392004)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | セスキテルペノイド / ヨモギ属植物 / セスキテルペン合成酵素 / シトクロムP450 / 組換え酵母 |
研究概要 |
本研究は、潜在的医薬品資源として重要な化合物群であるヨモギ属植物由来セスキテルペノイドの構造および蓄積プロファイルの多様性に着目し、1)その多様性創出の分子機構を、セスキテルペン合成酵素およびセスキテルペン骨格の酸化修飾に関わるP450酸化酵素遺伝子の構造、発現、および酵素機能の同属種間比較を通して理解するとともに、2)ヨモギ属から得られた各種セスキテルペン合成酵素とP450の機能バリアントを「様々な組み合せ」で酵母に導入し、「多様な天然・非天然型セスキテルペノイドのコンビナトリアル生合成」に挑戦することを目的としている。初年度の成果として、アルテミシニン生合成酵素遺伝子としてA.annuaから既に単離されていたADSおよびCYP71AV1の相同遺伝子が、アルテミシニンを生産しない他の複数のヨモギ属植物においても存在していることを明らかにした。さらに、アルテミシニン非産生種から単離したCYP71AV1バリアントについては、アモルファジエンを基質としうるものの、A.annuaのCYP71AV1とは反応特異性が異なることを明らかにするとともに、そのような反応性の違いを決定づけるアミノ酸残基の特定に成功した。この成果については、現在、投稿論文を執筆中である。また、3種のアルテミシニン非産生種から、これまでアルテミシニン生合成に特異的な酵素遺伝子と考えられていたADSと極めて相同性の高い遺伝子をゲノムPCR法により単離した。さらに、これらのゲノム断片を強力なプロモーター下に連結したキメラ遺伝子を形質転換植物中で発現させることにより、タンパクをコードしうるcDNA断片を得ることができた。今後、得られたcDNA断片を導入した大腸菌からリコンビナントタンパクを抽出し酵素機能解析を行なう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に示したように、アルテミシニン生合成酵素遺伝子であるADSおよびCYP71AV1、とその相同遺伝子を複数のヨモギ属植物種から単離した他、A. annuaからすでに報告されていた4種のセスキテルペン合成酵素遺伝子、また、その他のヨモギ属植物種から機能未知の推定セスキテルペン合成酵素遺伝子(計3種)を縮重PCRにより単離した。さらに、これらの遺伝子をそれぞれ導入した形質転換酵母の作出も完了しており、おおむね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度内に、計8種のセスキテルペン合成酵素遺伝子をそれぞれ導入した組換え酵母が得られた。平成24年度はまず、ガスクロマトグラフィー質量分析装置を使用して、これら組換え酵母の代謝産物(セスキテルペノイド)の分析を行なう。さらに、アルテミシニン生合成に関与するCYP71AV1および、アモルファジエンに対する反応性が若干異なる複数のCYP71AV1機能バリアントも単離されたことから、これらのP450遺伝子を上記の組換え酵母に導入し、各セスキテルペン骨格に対する反応性を解析する。さらには、アルテミシニン非産生種から単離されたADS相同遺伝子の産物について、ファルネシル二リン酸を基質としたインビトロ酵素活性試験を行なう。これにより、あらたなセスキテルペン合成酵素が得られる可能性がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に引き続き、遺伝子クローニング、ベクター構築等の分子生物学実験を行なう他、各種セスキテルペン合成酵素およびシトクロムP450酸化酵素遺伝子を導入した組換え酵母由来代謝産物をガスクロマトグラフィー質量分析装置を用いて恒常的に分析する必要がある。従って、一般的な分子生物学実験に使用する試薬ならびにキット類、プラスチック消耗品の他、代謝物分析に使用する有機溶媒、分析操作に必要なカラム等の各種消耗品の購入に使用する。また、現在執筆中である投稿論文の英文校閲ならびに投稿料に使用する他、昨年度中の成果について、国内学会での発表(2~3件を予定)を行なうための旅費に使用する。
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