研究課題
本研究は、潜在的医薬品資源として重要な化合物群であるヨモギ属植物由来セスキテルペノイドの構造および蓄積プロファイルの多様性に着目し、1)その多様性創出の分子機構を、セスキテルペン合成酵素およびセスキテルペン骨格の酸化修飾に関わるP450酸化酵素遺伝子の構造、発現、および酵素機能の同属種間比較を通して理解するとともに、2)ヨモギ属から得られた各種セスキテルペン合成酵素とP450の機能バリアントを「様々な組み合せ」で酵母に導入し、「多様な天然・非天然型セスキテルペノイドのコンビナトリアル生合成」に挑戦することを目的としている。24年度の成果として、アルテミシニン生合成酵素遺伝子としてA.annuaから既に単離されていたADSおよびCYP71AV1の相同遺伝子が、アルテミシニンを生産しない他の複数のヨモギ属植物においても存在していることを明らかにした。さらに、アルテミシニン非産生種から単離したCYP71AV1バリアントについては、アモルファジエンを基質としうるものの、A.annuaのCYP71AV1とは反応特異性が異なることを明らかにするとともに、そのような反応性の違いを決定づけるアミノ酸残基の特定に成功した。この成果を、FEBS Letters誌において発表した。また、3種のアルテミシニン非産生種から、アルテミシニン生合成経路における鍵酵素であるADS(アモルファジエン合成酵素)に対して極めて高いアミノ酸配列同一性を示すタンパク質をコードする遺伝子cDNAを単離した。これらの酵素機能解析を行い、ビザボロール合成酵素としての活性を有することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
「研究実績の概要」に示したように、アルテミシニン生合成酵素遺伝子であるADSおよびCYP71AV1、とその相同遺伝子を複数のヨモギ属植物種から単離し、機能解析を進めた。アルテミシニン非産生種から単離したCYP71AV1バリアントに関する機能解析研究結果について論文発表した。また、アルテミシニン非産生種由来のADSバリアントに関する機能解析結果が得られたことから投稿論文作成を開始した。したがって、おおむね順調に進捗している。
平成25年度は、アルテミシニン非産生種由来ADSバリアントに関する機能解析研究に関する論文作成と投稿を行う。同時に、初年度および平成24年度中に作成した、各種のセスキテルペン合成酵素遺伝子とシトクロムP450酸化酵素遺伝子のセットをそれぞれ導入した組換え酵母について、ガスクロマトグラフィー質量分析装置を使用した代謝物分析を行なう。
平成25年度は、各種セスキテルペン合成酵素およびシトクロムP450酸化酵素遺伝子を導入した組換え酵母由来代謝産物をガスクロマトグラフィー質量分析装置を用いて恒常的に分析する必要がある。従って、代謝物分析に使用する有機溶媒、分析操作に必要なカラム等の各種消耗品の購入に使用する。また、現在執筆中である投稿論文の英文校閲ならびに投稿料に使用する他、昨年度中の成果について、国内学会での発表(2~3件を予定)を行なうための旅費に使用する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
FEBS Letters
巻: 587 ページ: 278-284
10.1016/j.febslet.2012.11.031.